交換こ
「…早速買いに来たわけだけど」
蓮の行動がとても早く、あれよあれよと百貨店に連れてこられたホロホロは浴衣を選んでいる蓮を見た。
「いや、俺達二人共背が伸びたし新調をしようと思ってな」
「どこの世界線の蓮ホロよ
そもそも、俺はともかく蓮が身長伸びたなんて初耳ですけど?」
「貴様は馬鹿か?」
「おぉん?」
手にしていた浴衣を一旦戻すと蓮はホロホロの目の前へと立った。
己の発言に危機感を覚えたホロホロは少し後ずさってしまう。
「貴様、俺を見てなにか分からないか?」
「蓮を見てって…そりゃ…」
蓮に言われてホロホロは頭からつま先までゆっくりと視線を動かしながら見てみるも特に変わった様子はない。
「…別になんも
いつもと変わらねぇんだけど」
「そうだ、その"変わらない"ということが重要だ」
ホロホロの言葉を聞いて蓮はビシッと指差した。
「貴様は身長が伸びているにも関わらず、己の視界に入る俺になにも違和感を覚えていない
身長が伸びる=目線が高くなり、見えていた世界が"変わる"だろう
しかし、だ
貴様は俺を見てなにも感じていない、違和感がないということは…俺も貴様同様に身長が伸びているからであると証明ができる」
「…おぉ…それってつまり…」
「俺とお前どっちも身長伸びてるから差は広まってないけど変わってないってことだよな?」
「…ふッ」
蓮は腕を組みながら小さく息を漏らすと、ホロホロの頭に両手を乗せて勢いよく力を込め始めた。
「いててててててッ!ちょ、いだいッ!
物理的に縮ませようとすんなぁッ!」
「安心しろ、貴様の頭には大した脳がないんだ
脳の1つや2つ潰れても問題なかろう」
「死ぬわぼけ!」
「俺専用のキョンシーにしてやる、これでいつまでも一緒だ」
「真顔で言うな!てか今の時点で一緒なんだから変わらなくね?!
てかここ店だから!静かにしろよ!」
「一番うるさいのは貴様だがな」
蓮はパッとホロホロから手を離すとホロホロは頭を手で抑えながら飾られている浴衣を見渡した。
「いてて…でも浴衣って少し動きづらくね?
それならいつもの格好の方が動きやすいと思うんだけど」
「浴衣も浴衣で涼しいからな、貴様の為に選んだのだが…嫌か?」
「うぐ…その言い方はずるくね?
そう言われたらさぁ…そうするしかねぇじゃん?」
浴衣を眺めている蓮が発する言葉に少し照れながらも隣に並んでホロホロは選び始める。
「ホロホロはやはり青系か?」
「んー、どうだろ
好きっちゃ好きだけど別に色に拘りねぇかな
蓮はー…黒とか黄色似合いそう」
「黄色だと少し派手ではないか?
それならば安定した黒色かと思うのだが」
「蓮ならどっちも似合うんじゃね?」
「…ふむ…ならば色違いにするか
青と黒で」
「別にいーぜ?俺どうせそんなに拘りねぇし
だけど、それっていつもと同じパターンだよな
大概俺が青で蓮が黒でよ」
「…」
言われてみれば確かにそうか。
ホロホロの言葉に少し考え込んだ蓮はチラリとホロホロに視線を向ける。
ホロホロは気づいていないのか、"これ蓮似合いそー"などと自分の分はそっちのけで浴衣を選んでいる。
「そうだな、たまには変わった色を選んでみるのもいいかもしれない」
「お?んじゃ、やっぱ蓮黄色選ぶ?」
「いや、俺が選ぶのはー…」
そう言って蓮が選んだ浴衣の色を見てホロホロは驚いたように見つめた。
「…お前、それって…」
「たまにはこういうのもよかろう?」
普段はホロホロが選ぶであろう青色の浴衣を眺めながら蓮は言う。
「え、蓮が青着るの?」
「あぁ、貴様は今回黒で」
「…いや別にいいけどよぉ…いいんだけどさぁ…」
ぶつくさ言い始めるホロホロを横目で見てみると、少し恥ずかしそうに頬を赤らめていた。
「なぜそこで恥ずかしがる?」
「…なんか…なんともいえねぇけど恥ずかしくなったわ」
「貴様の羞恥心はわからんな…」
「あ、でも蓮は濃い目の青よりも水色の方が似合う」
「そうか?ならば貴様が選べ
俺も選んでやる」
「…へへ」
ホロホロは浴衣を選びながら嬉しそうに笑った。
「来週の花火大会楽しみだな」
「…そうだな」
→オマケ