一人、お独り、寂しんぼ
「…遅くなってしまったな」
家の前へと辿り着き、鍵を差し込んで開けると買ってきた荷物を片手に持ちながら玄関へと入って一息ついた。
もう少し早く帰れると思ったが奴が食べれそうな物を考え込んでいたのとレジが思ったよりも混んでいた…まぁ、奴のことだ。
まだ眠っているとは思うのだが…。
廊下を歩き、リビングに繋がる扉を開けると、なにかにぶつかっているのか中途半端な開き方をしてしまう。
「む、なにかに当たって…」
特に扉の前に置いたりしていないはずだが…。
疑問に思った蓮は隙間からなにがあるのかと覗いてみる。
すると、そこにはベッドで眠っていたはずのホロホロが扉を背にして座り込んでいた。
「な…ッおい、ホロホロ
なぜそんな所に座り込んでいる」
驚きながら手を伸ばして体を軽く揺すると"んぁ"と声を漏らしながら蓮へとゆっくり顔を向ける。
蓮の顔を朦朧とした瞳で数秒見つめると、ぶわっと瞳に涙を溜めた。
「…れぇん」
「?!どうした、どこか痛むのか?!
それよりも、少しそこを退け!近くに寄れん!」
ホロホロの涙にわたわたと慌ててしまい、とりあえず退くように声を掛けるとホロホロは少し体を移動させた。
そのおかげで扉が自分1人入るくらいよ余裕が出き、隙間から蓮は入るとぼろぼろと涙を流すホロホロを抱きしめる。
蓮に抱きしめられほっとしたのか、ホロホロは弱々しく抱き締め返した。
「まったく…熱があるというのになんで床なんかに座って」
「だってよぉ…」
「れん…いねぇんだもん…」
「…は…」
ホロホロの言葉に蓮は驚き目を見開いてしまう。
「起きたら、れん、いなくて…帰ってこねぇし…探してもいねぇし…」
ぐずぐずと顔を涙で濡らしながら言うホロホロを蓮はしばらく見つめた後に小さく息を吐いた。
普段このような事を言わないから、俺がいなくても大丈夫なのかと思っていたが…。
「すまない、ゼリーを切らしていたから買い出しに行っていた」
ホロホロの目元に溜まっている涙を指で拭い、優しげな声色で言う。
「ん、なら声かけろよ」
「眠っていたのでな、起こすのも悪いと」
「…独りで勝手に置いてかれる方が嫌だ」
「…ん…ん"ッ」
普段滅多に見られないホロホロの弱気な様子と言葉に思わず頬が緩んでしまいそうになり、口元を手で隠して悟られないようにする。
体調が悪く、心も弱ってしまっているせいなのか本音なのかはさておき…まぁ…たまにはこういうのも悪くはないな。
「…れん?」
「いつまでもここにいては体を冷やす
まだ熱もあるのだからベッドに戻るぞ、立てるか?」
ホロホロから手を離して立ち上がりながら問いかけると、ホロホロは"ん"と蓮に両腕を伸ばす。
「離れたくねぇ、から抱っこ」
「…」
可愛いか?
額に手を当てホロホロを見下ろすと、早くしろと催促するような眼差しで見上げられる。
蓮は"分かった"と声を掛けるとそのままホロホロを姫抱きをし、少しよろけながら寝室へと向かった。
ホロホロは落ちないように蓮にきつく抱きつき、ベッドへと降ろされるも離れることがない。
「ホロホロ、離」
「…一緒に、いてくんねぇの?」
「いる」
甘えたような声色で言われ、蓮は即答しそのままホロホロの隣で横になった。
返答に満足気に"ふへ"と表情を緩ませると、ホロホロはスッと瞳を閉じてしまい、すぐに寝息を立て始める。
「…俺の事待っていたのか」
即寝したホロホロの頬を優しく撫でながら呆れたように蓮は言うと、ふっと柔らかな笑みを浮かべた。
まったく…。
「ものの2時間程しか離れていないのにこの様で、よくもまぁ"実家に行け"と言えたものだな」
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