一人、お独り、寂しんぼ
「…ふむ…風邪だな」
手に持った体温計の数値を見て、蓮はベッドに横たわり額に冷えピタを貼っているホロホロを見下ろした。
「げほっ…んなわけねぇじゃん
俺が風邪引くわけねぇだろ」
話すだけでも辛いのか咳き込みながら上体を起こそうとするのを蓮は"寝ていろ"と無理やりベッドに体を沈めさせる。
普段ならば抵抗するであろうが、体に力が入らないのか抵抗することはなかった。
「馬鹿は風邪を引かない、というが馬鹿な貴様でも引くものなのだな」
「だ…から」
「違う、と言うのは目に見えている
しかし、この数字が物語っているが?」
蓮は手に持っていた体温計をぐりぐりとホロホロの眉間に押し付けた。
「いだ…ッ、ちょ、見えね…いだいッ!」
痛みから思わず声が大きくなり、喉に負担がかかり大きく咳き込んだ。
蓮は小さく息を漏らすとスッと体温計の数値が見えるところまで下げた。
「あー…っと…34.…」
「38.9℃だ、馬鹿者
今日明日は1日大人しくしていることだな」
体温計をサイドテーブルへと置き直すとベッドの空いているスペースに腰掛けて優しくホロホロの頭を撫でた。
「今日は付きっきりで看病をするからなにかあった時は…」
「…それはいらねぇよ」
「ただの風邪だと侮るな、容態が悪化することもあるのだからな」
「俺が言いてぇのはそうじゃねぇよ」
ホロホロはだるい体をゆっくりと起こし、潤んだ瞳で蓮を見つめた。
「お前、今日実家に帰るって言ってたじゃん」
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