まだ5月ですよ
「ん"ー…」
「ホロホロ退け、暑い」
ソファーに腰掛けてニュースを見ている蓮の太ももを枕代わりにし、ホロホロは唸りだす。
部屋のこの蒸し暑さに耐えきれず、蓮はホロホロへと声を掛けるが退く気配はない。
「まだ5月だというのにこの暑さとは…
そろそろエアコンでも使うか?」
「エアコンはまだ早くね…扇風機がいい…」
「…確かにな、エアコンだと貴様が文句を言うし
仕方があるまい、扇風機持ってくるから少し待っていろ」
ポンッと軽くホロホロの頭を撫でて退くように促すも動く気配は一向に見せず、むしろ腰に腕を回して逃さないようにし始める。
また始まったな…。
その様子を見て蓮は小さく息を漏らすとホロホロの顔を覗き込もうとする。
しかし、抱きついているせいもあるのか表情が伺えない。
「ホロホロ」
優しく頭を撫で始めるとホロホロはチラリと視線を微かに蓮へと向け、撫でている手にグイグイと頭を押し付け始めた。
こいつがくっついてくると、夏が近付いてきたなと感じる。
なぜだか知らんが、ホロホロは自身の体温が上がるとくっついてくる。
どんな体質なんだ、と最初は思ったがこやつが自分で俺にくっついてくることは早々無いのでこれはこれで良い。
…良いのだが。
「離れんと扇風機出せんぞ」
「暑い…」
「なら離れんか、馬鹿者」
そういうやり取りを繰り返すも一向に離れることはない。
くっつくのは良いのだが、動きを制限されるとそれはそれで困る。
ホロホロの為に動こうにも動けなくなるからな。
蓮は頭を撫でるのをやめるとホロホロの顔に自分の顔を近付けて普段はタオルで隠れている額へと軽くキスを落とした。
ホロホロはギュッと瞳を閉じており、その表情を見て思わず笑みが溢れる。
「んだよ」
「いや、愛らしいなと
額にも汗が滲んでい…」
額に触れると汗が滲んでいるのがわかり、視線を首筋へと移していくと思った以上に汗をかいているのがわかる。
あ、これはやばいな。
「うぉ?!」
「飲め」
蓮はベリッとホロホロを剥がすと早急に冷蔵庫から水の入ったペットボトルを持ってきて飲むように促す。
「貴様、相当汗をかいているぞ
水分とらんと熱中症になる」
「まだ5月だから大丈夫じゃね?」
「5月だろうとなんだろうとこの暑さだ、あまり馬鹿にするものではない」
ほら、と差し出すとホロホロはジッと蓮を見上げなにかを考えている様子。
「おい、早く飲」
「なら、蓮が飲ませてよ」
「は…」
ホロホロの言葉に思わず動きを止めると、"ん"と口を微かに開けて"ここに入れろ"と言わんばかりに指を指す。
こやつめ…、普段このようなことはしないくせに。
普段とは違う積極的な姿に驚きながらも、蓮はペットボトルに口つけ中の水を少量口に含む。
そして、ホロホロの唇へと口付けをすると口内に含んでいた水を流し込んだ。
「ん…」
ホロホロの喉から"ゴクン"と飲み込む音が聞こえるのを確認すると、蓮は唇を離す。
「…満足か?」
蓮からの問いかけにホロホロは"んー"と声を漏らすとするりと蓮の首へと腕を回して密着をした。
「…もっと」
「…これでは、いつまで経っても涼めんな」
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