その背中も愛おしくて
「ん、あぁ、すまない
気づかなかった」
ホロホロは手にしていた玉ねぎを一旦起きながらため息をついた。
「なんだよ、そんなに俺が料理すんの不安?」
「いや、そうではない」
「...?ならなんだよ」
俺からの返答にホロホロは首をかしげる。
「ホロホロ、背中向け」
「あ?ほんとなんなんだっての」
「いいから」
「へーへー...これでいいかよ」
ぶつぶつと文句を言いながらも再び俺へと背中を向け、それを確認した俺はそっと背後から抱き締め腹部へと手を回した。
「...ふむ」
「え、ほんとなんなわけ?」
ぴたりと背中に頬をつけ、背中の暖かさを堪能しているとホロホロが少し困惑しがちに声をかける。
「なんか俺した?」
「なんだ?なにかやましいことでもあるのか?」
「ねぇけどさ、いきなりこういうことすっと...あー、いや
蓮の場合これが日常茶飯事だわな」
少し考えた後に額に手を当てて"ハァ"とため息をつき、諦めたような口振りで言う。
「嫌か?」
「...嫌じゃねぇけど、カレー、作りづれぇ」
「...俺よりもカレーをとる、と」
「...」
「黙るな、馬鹿ホロ」
「んじゃ、理由の一つ二つ教えてくれてもいいんじゃないですかねぇ?
料理するってのに理由もなしに抱き付かれたら集中できねぇっての」
俺が腹部に回していた片手をとり、自分の頬へと擦り寄せながらホロホロは問いかけてくる。
「別に大した意味などない
普段貴様の背中をそうそう見ることがないから見ていただけだ」
「え、そんな理由?」
「だから大した意味などないと先に言っただろう?
だが、見ていただけではなにか物足りなくて触れたくなった
やはり、俺には眺めているだけは合わないな...きちんと貴様に触れないと」
「...お...おぉん?」
「貴様、理解していないな?」
「いや、蓮らしいってのはわかったわ、うん」
「そういうわけなので、カレー作りは少し待て
端的に言えばホロホロ補給をさせろ」
「さっきまで散々してたよな、お前?!
どんだけ俺のこと好きなのよ!」
「愚問だな、ホロホロ
その問いの答えは前からずっと知っているだろうに」
俺はそう言うとホロホロの腕を掴んで引き寄せる。
「"好き"ではなく"愛している"だ」
「ッ...くっそ重いわ...!」
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