暑い時には冷やしましょう


俺の背後から抱きつくような体制のホロホロを一瞥し、俺は腕へと手を伸ばす。
うっすらと汗ばんだ腕を見、背中に微かに伝わる体温に相当暑いのだろうと察する。

「エアコンつけているのに相当暑いようだな」

「あー...なんか知らねぇけどあちぃ」

「ならなおさら離れろ
貴様の汗が俺にまでつく」

「やぁだよ」

俺の言葉に聞く耳を持たず、首筋にすりっと頬すりをしてくる。

熱がある、というわけではなさそうだな。
こやつの体温からして、いつもより熱いがそこまで熱いわけではない。
しかし、そうなるとこの現状はどういうことか。

ふむ、と考えながら俺は奴の腕を掴んでいた手を頭へと移動させて優しく撫でる。

いつにも増してスキンシップが激しい...甘えてくれるのは俺としては嬉しいが。
しかし、なんだ...この感覚は。

「なに考えてんだよ、蓮」

「ッ!」

俺に相手にされないのが癪に触ったのか、俺の前へとやってきて太ももの上へと腰を下ろし向かい合わせに抱きつくいてきた。
声をかけられ、顔が近くにあることに驚いた俺は軽く目を見開きながらホロホロの顔を見る。
頬が仄かに赤らんでおり瞳が潤んでいつもは見せない表情に己の鼓動が少し早まるのを感じた。

「...いつになく積極的だな
またなにか下らぬことでも考えているつもりか?」

平静を装いながら問いかけ、ホロホロの腰に手を回してグッと引き寄せる。
先程よりも微かにだが密着をするも、いつものような恥ずかしそうな表情を見せることもなく俺の発言に少し怒ったように頬を膨らませた。

「そんなんじゃねーよ
ただ、今はくっついてたいんだよ」

自分に抱きつく力を強めながらホロホロはそう言うとぐりぐりと俺の肩へ額を擦り始める。

「...そうか、ならば疑ってすまない」

こやつもようやく素直に俺へと甘える事を覚えたようだな。
それは喜ばしいことだ。
だが、先程からこやつの行動に覚えがあるように感じる。
そういえば、前にエアコンが壊れた時もやたら離れたがらなかったな。
あの時はさほど気にはしなかったが。










...いったい、いつ...。










『...ッは...れ...』

『ん...おい、抱きついたら動けんだろう』

『はぁ、ぁ...やだ...離れ、んなよ』










...。










「...ッ?れ、ちょ...苦しんだけど」

「...うるさい、黙れ
抱き締めてやるから少し大人しくしてろ」

「お...おぉ?」










体温上がると気持ちが高揚するのか...この馬鹿めが。










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