暑い時には冷やしましょう


「ちょ、狭い狭い」

1人で入っていたときとは違い、窮屈になったプール。
ホロホロは文句を言いながらおれの足の間に入り寄りかかっていた。

「貴様が入れと言ったんだ
文句を言うな」

「まさか本当に入るとは思わなかったし、プールもこんなに小さいとは思わねぇじゃん?」

「貴様が持ってきたものだろう?
そもそも、なぜプールなんて持っていたんだ」

「商店街の福引きで当たった
本当は4等のかき氷器欲しかったんだよなぁ」

「なるほどな、通りでサイズを把握していなかったわけだ」

「ちなみに、水鉄砲は買った
プール当てたついでについ」

「子どもか、貴様は」

「うぉうッ!背後からかけんのやめろよ!
気持ちいいんだけどびびるわ!」

背中に向けて放射をすると、驚いたように声をあげながら顔を向けてくる。
プールのサイズのせいか、体が密着しているためにお互いの顔の距離が、近い。
ホロホロはジッと俺を見た後にハッとして慌てて前を向く。

「おい、この位なんともなかろう」

「いや、そうなんだけどよぉ...不意にくると、なぁ?」

「貴様が勝手にこちらを見たんだろうが」

日に照らされているせいか、体に付いた水滴がキラキラと光っているように見えて眩しい。

そういえば、あまり日に当たっている状態でこやつの体を見るのは初めてか?
室内でなら隅々と見ているんだが...。
プールや海など行ったこともないし、今度連れていくのも...。

「...」

「え、お、おぉ?なんだよ」

「...いや、なにも」

肩に顎をのせてジッとホロホロの体を見つめ、俺は小さく息を漏らした。

「ホロホロ、海に行きたいか?」

「海?まぁ、行きたいっちゃ行きたいけど」

「そうか...ならば、ちゃんと上着を羽織るのであれば連れていってやる」

「上着って、海入るのに別にいらなくね?あちぃじゃん」 

「好きな者の裸体を他人に見せたくない」

「裸体って言うなよ、上半身裸って言え
しかも、俺の体見ても他の奴はなんとも思わねぇよ
お前、ほんっとうにそういうところポンコツだよな」

「貴様にだけだ
それに、他にも理由がないわけではない」

「なんだよ、他にもあんのかよ?」

「貴様、自分では気付いていないだろうがもう肌が赤くなっているぞ?」

「え、まじ?」

「あぁ、こことか」

顔をこちらに向けるホロホロの言葉に頷きながら微かに赤みを帯びているうなじへと指を這わす。

「元々焼けやすいのか?」

「あー、確かにそう言われりゃそうかも
すぐに赤くなって皮剥けんの」

「...パラソルでも立てておけばよかったな
そうすれば少しはましになったかもしれん」

「うへぇ、これ痛くなっかな?」

「そうならない為にも上着を羽織るんだ馬鹿者
今回ばかりは諦めるんだな」

「風呂入るとき嫌なんだけど」

「ならば傷が浅いうちに出てしまうか?」

「それはそれでもったいねぇよ...あ、そだ蓮」

「なんだ」

「もうちょい俺の事抱き締めてくんね?」

「...は?」

「ほれ、早く」

ホロホロの発言にピタリと動きを止めて目を見開いていると"早くしろ"と言わんばかりに前を向いて急かし始める。

いや、この状態で抱き締めるのは...。

「蓮?」

「...はぁ、貴様が言ったのだからな?俺は知らんぞ」

「え、なにそれ怖いんだけど?俺なんかした?」

俺は再びため息をつきながら言われるがままにホロホロを後ろから抱き締めた。

「ん、そうそうそんな感じ
これなら俺は蓮に守られてっから日焼けしなー...」

ゴリッ。

「...おい、蓮」

「...なんだ?」

「なんだ?じゃねーよ!
なに澄ました顔で押し付けてんだよ!」

「貴様が言ったんだろう?抱き締めろ、とな」

「いや言ったけど、言ったけどよ!
なんで反応させてんだ!」

「仕方あるまい、裸同然の状態で貴様を抱き締めているんだから
それに、日に照らされている貴様の体はどうも魅力があるのでつい」

「ッ、ちょ、押し付けんな!ほんっとお前、馬鹿!」

「そう言いつつ嫌ではないだろう?」

「うぐ...ッ...ぅ...」










「...そーいうのは、エアコン直ってからで...とりあえず収めろ、馬鹿」

「このまま野外でも」

「ッ...い...だめだろッ!」

「今少し揺らいだな」

「うるせぇ!」










*あとはご想像にお任せします。
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