お疲れなお前に


「れーん、大丈夫かー?」

ホロホロはベッドへと横たわって瞳を閉じている蓮へと声をかける。
声に気付いた蓮は微かに瞳を開け、ホロホロへと目を向けた。

「...あぁ、大丈夫だ
あまり気分は優れないがな」

そう言い蓮は頭を抑えながら上体を起こして顔を軽く横に振る。

「雨天時はどうも調子が悪い」

「いつも頭いてぇって言ってるもんな」

「偏頭痛、というやつだ
理由は人それぞれだが俺はどうも雨に弱いらしい」

「ほぉん、俺には縁がねぇからわかんね
ちなみに、今日はどんな塩梅?
たまに吐いてっけど」

「今日はそこまでではないな
だがまぁ...先程薬も飲んだし大丈夫であろう」

いつもよりも覇気の無い声色と顔色の悪さにホロホロはジッと蓮の様子を見てしまう。

蓮ってあんま体調とか崩さねぇけどこの時期はどうも辛そうなんだよなぁ。
でも俺、まじで頭痛と縁がねぇからどうしたらいいかわかんねぇ。

「...ホロホロ」

「お?」

ホロホロの表情で察したのか蓮はベッドに横たわりながら名前を呼ぶ。
とんとんと隣を叩いて"こちらに来い"と誘った。

「...え、さ、流石にえっな事は」

「馬鹿者、普段ならともかく今はする気は...」

「...黙るなよ!説得力ねぇな!」

言葉を止めて黙りこむ様にいつも通りの声量で突っ込みを入れてしまい、ハッとして口を手で覆い隠す。
チラリと蓮を見てみると少し表情を歪ませながらもまぁ...大丈夫そう。
これ以上話してるとまた大声出しそうになるからここはおとなしく言う通りにしとくか。
ホロホロは蓮へとごろんと向かい合わせに横になる。

「そうだ、それでいい」

ホロホロの行動に微かに微笑むと、蓮は俺の片手を手に取り額に当てた。
手の温度がちょうどいいのか少し寄っていた眉間のシワ取れる。

「...やはり、貴様は冷たいな」

「まぁー、確かに蓮に比べたらな
こればっかは生まれ持ったもんだからしかたねぇけど」

「俺は貴様のこの体温、嫌いではないがな」

「冷えピタ代わりになるからってか?」

「そういうわけではない
ただ、なんとなく好きなだけだ」

「ほーん...」

手のひらに額をすりッと押し付けながら言う様子ににやける口許を隠すように手で覆った。

いやさ、好きって言われ慣れてるけどこー...なんつーの?
不意にこんな可愛く言われるのはさ...ねぇ?
こんなこと言ったら絶対怒るだろうから言わねぇけど。

「冷やすのは頭だけでいいのかよ
なんだったらぎゅーで全身ー...」

そこまで言いかけて、蓮の寝息に気付いて口を閉じた。
顔を覗きこんでみると、ホロホロの手を握りしめたまま気持ち良さそうに寝ている。

「...あー」

そんな蓮の表情を見て俺は苦笑を浮かべると、蓮の頬へと顔を近付けて軽くキスを落とした。




 




「おやすみ、蓮」










ガシッ。

「んごぶッ」

顔を離そうとすると突然顎を掴まれて情けない声が漏れる。
恐る恐る蓮を見てみると、鋭い目付きでこちらを見ていた。

やべッ...起こし...。

「...ホロホロ」

「へ、へい...」










「そういうことはちゃんと起きてる時にしろ...!」

「は...そこなのかよ...!」










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