俺というものがありながら


時は遡り、シャーマンファイト---。

「...」

シャーマンファイトの本戦が始まり、無事にパッチ族の村へと着いて早数日...。
今まで共に村へと向かっていた葉、竜、リゼルグと敵対チームとなり俺はホロホロ、そして新たに出会ったチョコラブとチームになった。
葉達のチームと戦うにはその前に何戦かして勝ち残る必要がある。といってもこの俺がいるんだ。負けるはずがない。他の二人はただ単にお飾り要員だ。せいぜい前座としてコントでもしているんだな。










しかし...。










「葉の旦那ぁ!料理の方追加出来やしたぜ!」

「おぉ、サンキューな竜」

「あ、おいチョコラブ!それ俺の飲みもん!」

「別にいいじゃねぇか!どうせどれも一緒なんだからよ!」

「まぁまぁ、二人とも落ち着いて」

...。

「なんともまぁ、緊張感のない奴等だ」

蓮は目の前で行われているどんちゃん騒ぎを見てあまりの喧しさに息を吐き、自分へと運ばれてきた烏龍茶の入ったグラスに口をつけた。

このトーナメント戦が始まってから毎晩のように葉の家である民宿「炎」に集まり宴が行われている。
本来ならば俺達は敵同士、の筈なのだがな...。

「そんなに眉間に皺寄せてどうしたの?」

蓮が一人静かに飲んでいるのに気付いたのかリゼルグが隣へと腰かける。

「お前、ここで油を売っていていいのか?
貴様のチームはX-LOWSの筈だろう」

「まぁまぁ、あまり細かいことは気にしないで
そんな事を言ったら葉君のチームと蓮君のチーム...それに、後々は僕達皆が敵同士
なのになんで蓮君はここにいるの?」

先程まで蓮が考えていたことを察しているかのようにリゼルグは問いかける。

「質問を質問で返すな
...それに、俺がいなければ誰が奴を止めると言う」

「...なるほど」

葉と仲良さげに話をしているホロホロを顎で指すような仕草をするとリゼルグは察したのか苦笑を浮かべた。

「葉君がいるなら大丈夫だと思うけど」

「貴様は俺達と違い、奴との付き合いが浅いからそんな事が言えるんだ
奴の厚かましさを舐めるなよ」

「へぇ...」

瞳を閉じ壁へと寄りかかりながら告げる。
すると、リゼルグからなにか意味を含んだかのような声が漏れでた。

「なんだ」

「いや別になにも...それにしても、葉君とホロホロ君ってあんなに仲がいいんだね」

片目を開けて一瞥するとリゼルグの視線は葉とホロホロへと向けられている。

「なぁなぁ、葉が前聞いてたあの曲ってレコードまだあっかな」

「あー、あれか?たぶん売ってんじゃねーか?」

「お、まじか
葉と一緒に聞いてていいなーって思ったから俺も自分用に欲しいんだよ」

「なら今度おいらがよく行くショップ行くか」

「ラッキー!約束だかんな葉!」

葉の背中へと抱きつきながらはにかんでいるホロホロと満更でも無さそうな葉。










パリンッ。
 







非常に...不快な光景。








「え、ちょっと蓮君?グラス割れてるんだけど」

「あぁ、少し力みすぎた
布巾を持ってくる」

持っていたグラスが割れ中から出てくる烏龍茶を眺め、驚きと心配が混じったような声色で声をかけるリゼルグを他所に蓮は立ち上がり楽しげな声に包まれている部屋から出ていった。










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