僕の知らない世界の君


フランが話している最中、いきなり背中になにかが飛んできてそれはフランの背中へと命中をした。
"げろっ"と声を発したフランは少しむっとした表情で振り返る。

「痛いじゃないですかー、ベル先輩」

「…ベル?」

ベルの名前が出てきてマーモンもつられてフラン越しに扉の方へと目をやる。
そこには、自分の知っているベルとは髪型が違う青年が立っていた。
しかし、よくよく頭を見てみると癖のついた髪にちょこんとティアラが乗っている。

「てめぇが変なこと言ってるからだろが、蛙…あん?」

青年、ベルは少し苛ついた口調で言いながら部屋の中へと入ってフランとマーモンを見下ろし、マーモンの姿を見るとぴたりと止めた。

「見てくださいよベル先輩、マーモン先輩がこんなにちっちゃくー」

「うししッ、マーモンはいつも小さいっての」

特徴的な笑い方。

「…ベルなのかい?」

「…ずいぶん懐かしい格好してんなー、これって10年前くらいじゃね?」

ベルはしゃがみこみ、先程のフラン同様にジロジロと全身くまなく眺め、一通り見終えるとスッと手を伸ばして頬に触れる。

「ムムッ、べ…」

むにッ。

「むぎゅ、うきゅ、あの」

「おー、これ本物じゃん
幻術かと思ったけど実体だわ」

「あ、むむ、べりゅ」

むにむにと頬を揉んで感触を堪能し始めるベルに声をかけようにもマーモンは揉まれるがままにされてしまう。

「…そんで、お前はなんでそんなにちっこくなってるわけ?
今も今でちっこいけどさ」

「うむむ…雷の守護者の10年バズーカがいろいろあって当たってしまってね…」

満足したのかパッとベルは頬から手を離し、微かに痛む頬をマーモンは両手で触れながら説明をした。

「10年バズーカ…あー、なるほど」

「たぶん、5分間しかここに居れないは…」

そこまで言いかけて、マーモンは"あれ?"と疑問に思う。
その疑問をフランも感じたのか首を傾げた。

「あれー、でもミーがマーモン先輩の部屋に来てからもう5分以上は経ってますよねー?」

「…あぁ、僕もスクアーロと話している間で5分は経ってるはず…」

…まさか…。

1つの考えが脳裏に過ぎり、マーモンの頬に一筋の汗が伝う。

「それってさ、10年バズーカ壊れてね?」

自分が思っていた事を口にしたベルを見てマーモンは深い溜息をついた。

それしか考えられない。

「…そのようだね、元は壊れていた10年バズーカをボヴィーノファミリーに修理を頼んでいたはずなんだけど…
まさか、壊れたままだなんて」

「このまま戻れなくなったりーとかあるんじゃないですかねー?」

「いや、それはないと思う
近くにスクアーロがいたから、5分で僕が戻ってこないと分かれば再修理を頼んでくれるだろうからね」

「うーん、しかし困りましたねー」

フランはそう言いながらベルとマーモンを交互に見る。

「なんだよ蛙」

「いやー…」










「ベル先輩にちょうどいい玩具が現れたなーって
マーモン先輩、ベル先輩には気をつけてくださいねー?」

「君、僕をなんだと思ってるの?
ベルがそんなことするわけ…」

「…」

「ベル、なにその顔…玩具にしないでよね」










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