僕の知らない世界の君


「ジャッポーネに行く予定があるかだって?」

書類整理中、スクアーロに聞かれた言葉にマーモンは訝しげな表情で繰り返した。

「そうだぁ、ベルと一緒に行ったりしねぇのか?」

スクアーロは書類に目を向けたまま問いかけ、マーモンは"んー"と同様に書類を見ながら唸り声をあげる。
しかし、これといってベルと一緒にジャッポーネに行く用事は思い浮かばない。

ベルのことだから、"お寿司食べに行こう"と誘えば行くだろうけど…しばらく休み、合わないんだよなぁ。

「特にないけど…なんで?」

「ボンゴレ本部から預かりもんがあってな」

「預かり物…リボーン宛?」

「いや、違ぇ…雷の守護者のくそちびにだ」

「雷の守護者…って…確か、元はボヴィーノファミリーだったあの牛柄の…」

「そうだ、その牛柄のくそちびだ」

自分の予想とは反して以外な人物の名前が出て、マーモンはなおさら頭の中ではてなが浮かぶ。

「あいつが持ってた10年バズーカ覚えてるか?」

「うん、それは覚えてるけど」

「それが故障したか何だかで、そのボヴィーノファミリーに修理を依頼したそうなんだが、直ったはいいものの郵送しようにも危ないって事で届けるように言われててな」

「ボンゴレ本部でやればいいじゃないか
そんな雑用、やる必要ないと思うんだけど」

「一度、悪用されたことがあるって言うんでその護衛も兼ねて、だ
…ったく、こっちも暇じゃねぇのによ」

「…ふぅん、それは何処にあるの?」

めんどくさそうな口ぶりのスクアーロを他所にマーモンは少し興味を持ちながら聞いてみると、"俺のクローゼットの中だ"と答えが返ってくる。
マーモンは一旦書類をテーブルに置いて、スクアーロのクローゼットへと近付いて開けてみると、中には見覚えのあるバズーカが乱雑に置かれていた。

「…頼まれた、とか言いながらも雑な置き方だね」

「仕方ねぇだろぉ、見えるところに置いておいたらベルが悪戯に使うかもしれねぇから」

「それは確かに…しかし、本当にこれで10年後の自分と変わることが出来るのかい?」

実際にリング争奪戦時に見たとはいえ、やはりまだ疑わしく思ってしまう。
しかし、もしこのバズーカの原理が分かったら…。

これは、いい金儲けが出来るかもしれないね。

「…う"ぉぉい、お前なに企んでやがる」

どうやら、表情で読み取ったのかスクアーロがジトリとした目つきでマーモンに声をかけてきて、マーモンは表情を引き締めるとバズーカを手に取りながらスクアーロに身体を向けた。

「スクアーロ、僕がこれジャッポーネに届けてあげる」

「信用できるかぁ!お前、さっきすげぇなにか企んでるような顔してたぞぉ!」

「企むだなんて心外だね、僕が折角善意で言ってあげてるのに」

「くそが、お前もベル同様、いたずら好きなの忘れてたぜぇ!
これは俺が届けに行くから離しやがれ!」

ガバッとスクアーロは立ち上がりマーモンにつかつかと近づいていくと、バズーカに手をかけてマーモンから取り上げようと力を入れた。

「ムムッ、ちょっとスクアーロ…そこは」

ふと、スクアーロが引き金に触れたのを見て注意しようとした瞬間‐‐‐。










カチッ!

「あ」

引き金が引かれる音。

銃口は、マーモンへと向けられていた。












ドカァァンッ!

   






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