雨雨ちゃぷちゃぶ
「ッあー、すんげぇ濡れ濡れ」
アジトの扉が開き、外から全身ずぶ濡れの状態のベルがぶるぶると顔を横に振り、水滴を少しでも払おうとする仕草をする。
「まったく…ひどい目にあったよ
まさか、いきなり雨に降られるなんてね…しかも土砂降り」
その後ろから同様にずぶ濡れのマーモンがついてきてげんなりとした表情を浮かべた。
「雨降った瞬間、僕だけ先にテレポートで帰ろうとしたのに…君が掴んで離さないからとんだ巻き添えを食らってしまったよ」
「うししッ、1人だけんなズルさせるかよ」
「ズルじゃないよ…まったく…くしゅッ」
「粘写チャンス?」
「怒るよ、ベル…ふくしゅッ…もう寒いから早く部屋行こう
暖かいお風呂入りたい…」
雨に濡れた服が身体に張り付いてずっしりと重い。それに、寒い。
マーモンはぶるっと身体を震わせ、自分の身体を抱きしめながらゆっくりと廊下を歩き始めた。
その後をベルは"へーい"と返事をしてタタッと隣へと並ぶとマーモンの速度に合わせて歩き出す。
歩くたびにお互いの服から水滴が落ち、どれだけ外の雨が多かったのかが目に見えてわかる。
「…これ、スクアーロにバレたらうるさくなりそ」
自分達の歩いた廊下が濡れてしまい、マーモンは後ろを振り返りながら呟く。
「仕方なくね、こればっかはさ
こーいうのは下っ端にやらせればいーし」
「それもそうか…あ、ちょうどいいところに」
どうしたものかと考えている時にタイミングよく部下が前方から歩いてきており、マーモンは声をかけようと近付いていく。
ガシッ。
「ム?なにさベル…わぷ」
いきなりベルに腕を掴まれ、マーモンが振り返りながら声を掛けるといきなりバサッと頭になにかをかけられ、驚きの声をあげる。
それに触れてみると、布のような物、そして濡れている。
これは…ベルのか?
少し考えて、これがベルが着ていた隊服の上着だと察した。
「そこのお前、王子達が歩いた所掃除しといて」
上着を取ろうとするも、ベルが手で押さえつけているのか取ることができない。
頭上からベルが部下に話しかけている声と、"わかりました"と返事が聞こえたと同時に足音が聞こえた。
近くに人の気配がなくなったのを感じると、ベルの手が自分の頭から離れ、上着も自分の上からなくなった。
「ちょっとベル、なにするのさ
おかげでなおさら濡れたんだけど?」
「お前の尊厳守ってやったんだから文句言うなよ」
「…」
意味がわからない。
そんな事を言いながらベルはマーモンの手首を掴んで歩き始める。
尊厳もなにも、今関係ないと思うんだけど。
ほんと、この王子の思ってることはわからない。
…まぁ、それがベルらしいと言えばらしいんだけどね。
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