真っ暗なこの中で
「マーモンの状態はどうだ、ルッスーリア」
マーモンを連れてヴァリアーアジトへと戻ってきたスクアーロ。
医師とルッスーリアにマーモンの診察を任せ、着替えなどを済ませたスクアーロは医務室へと入りながら状態を聞いた。
「閃光弾による一時的なものね
特に目の中が傷付いたりしてるわけじゃないから、お医者さん曰く1日2日で見えるようになるらしいわ
ただ、耳の方は破れた鼓膜が完全に閉じるまで1ヶ月位はかかるみたい」
「…そうかぁ」
ルッスーリアからの説明を受けながらマーモンに目を向けると、目は包帯で巻かれているらしく、フードから包帯が見え隠れしている。
「マーモンちゃんがこの状態じゃ、任務は当分お預けにするしかないんじゃない?」
「ムムッ、それは困るよ」
任務の話になると、マーモンはピクッと身体を跳ねさせ微かに聞こえた声を頼りにルッスーリアの方へと身体を向けた。
「お金が入らなくなるじゃないか」
「あらやだ、聞こえてたの?」
「う"ぉぉい、金関係のこととなると聞こえるとか都合のいい耳してんなぁ」
「だからってねぇ、聴力もほぼなくて視力が完全に無い今、任務に出てもかえって怪我をするだけよ?
マーモンちゃん、痛いの嫌でしょう?」
マーモンが聞き取りやすいようにルッスーリアはしゃがんで口を片方の耳へと近づけて普段よりも少し声量を大きめに声を発した。
その言葉にマーモンは不服そうに唇を尖らせた。
「あのね、僕の事子ども扱いしないでくれる?
今回の任務だって、幻術で視力と聴覚補ってたし」
「それならまぁ…あとはスクアーロの判断に任せるけど」
チラリとルッスーリアはスクアーロに目配せをして判断を煽ると、スクアーロは少し黙り込んだ後に息を漏らした。
「どうせこいつに何を言っても聞きやしねぇ
それで任務失敗でもしたらお前の事たたっ斬るからなぁ」
「…それは大丈夫さ」
「んもう、許可していいのスクアーロ?」
「別に構いやしねぇよ
こいつの事だからなんだかんだでこなすだろうから
だが、お前が任務の時は他の幹部もつける
当然、俺も手が空いてりゃついてく」
「別にそこまで過保護にならなくてもいいと思うんだけど」
「うるせぇ、お前の幻術の力は嫌と言うほど分かってるが念の為だぁ!
それが嫌なら任務行かせねぇぞ!」
「えぇ…わかったよ…仕方ないな…
それじゃ、診察が終わったなら部屋に戻るよ
スクアーロ、手貸してくれるかい?」
渋々ながらも納得をしたマーモンは腰を下ろしていた椅子から立ち上がりスッと目の前に手を差し出す。
スクアーロはその手をとるとマーモンの歩幅を合わせて歩き出した。
「しばらくこいつは俺の部屋で面倒見る
ルッスーリア、あとで部下使って荷物運ばせてくれ」
「はぁい、わかったわ
看病お願いね、スクアーロ」
「君の部屋って…僕今書類整理とか出来ないからね?」
「んなこと怪我人にさせるかぁ!
お前の世話してやるって言ってんだから文句言ってんじゃねぇぞ!」
「あぁ、そういうこと…」
キレながら喋るスクアーロの言葉にマーモンは納得したような声で呟き、2人は医務室から出ていってしまった。
その背中を見送ったルッスーリアは"やれやれ"と一息をつく。
「なぁんだかんだで、マーモンちゃんの事心配してるんだから…素直じゃないわねぇ」
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