僕に関心を


「…まぁ、君に恋人がいないなら今日は十分にお泊まりが出来るね」

マーモンは安心したように息を漏らし、ソファーに体を沈めながらクッションを抱きかかえた。

「しかし、意外だな」

「ム、なにがさ」

「お前が考え込むまで気にしていたとは、ということだ」

「別に気にしていたわけじゃないけど…ムムム…さっきも言ったけど邪魔しちゃうし」

「そんなの、普段のお前だったら気にしないだろう
私の邪魔をしようがなんだろうが自分本意で行動しているのだから」

「失礼な奴だな、まぁ、否定はしないよ
でも、それとこれとは別だからね
君がそれで幸せに…」

"なってしまったら、僕はちゃんと祝福出来るのだろうか?"

「おい、どうした」

いきなり話すのをやめて止まってしまったマーモンをヴェルデは不思議に思いながら顔を向ける。
マーモンはハッとすると、"なんでもない"と告げてクッションに顔を埋めた。
その行動に疑問を抱きつつも、"そうか"と一言言ってヴェルデはテレビの電源を入れる。

…いやいや、僕は何を考えているんだ。

先ほど一瞬過った己の思考に顔をブンブンと振りながら顔をクッションに押し付けた。

ヴェルデに恋人が出来て、幸せになるのを祝福しない馬鹿が何処にいるんだ。
別に僕とこいつはそういう関係なわけないし。
そもそもこいつは僕に興味がない。
お互いがお互いにビジネスパートナーと思っているだけさ。

「…」

マーモンはクッションから少し顔を覗かせて隣にいるヴェルデへと目をやる。
ヴェルデは視線に気付いてないらしく、テレビをジッと見ていた。










…そうさ、こいつは…僕に興味なんてない。










「…はぁぁぁぁ」

マーモンが大きなため息をつくとヴェルデはビクッと驚いたように肩を跳ねさせ、怪訝そうな表情を向けた。

「先程からなんなんだ、お前は」

「別に、何も無いよ
任務で疲れただけさ」

ボフッとヴェルデへと寄りかかりふと瞳を閉じる。
お互いの肩と肩が触れ合い、微かに体温が伝わった。

「そうか、ならば寝ろ」

「ならここ退いて、僕の寝床だから」

ポンポンッと今自分が座っているソファーを叩きながらマーモンは催促をした。

「…いつも思うが、ソファーで寝て身体痛くならないのか?」

「まぁ、任務の時とかこの硬いソファーよりも硬いところで寝たりするから」

「硬いは余計だ
しかし、それでは疲れもとれないだろう?」

「ムム、でもだからといって来客用のベッドとか君の所置いてないじゃないか
あるといっても君のベッドだけだし」

「…チッ、察しが悪い奴だ」

ヴェルデは小さく舌打ちをしながら自分のベッドを親指で指した。










「私のベッドで共に寝れば問題あるまい」

「…は?」










突然のヴェルデからの誘いにマーモンは少し間をおいて間抜けな声を漏らした。

「…いやいや、無理でしょ
大の男が2人で添い寝って」

ベッドをチラリと見た後にマーモンは顔を横に振った。

「…お前が大の男なのかは甚だ疑問なのだが
その小ぶりな体型ならばいけなくもなかろう」

「…」

小ぶりは余計だ。
だけど、まぁ…僕のサイズ感的にはヴェルデと一緒でもギリ…いや、結構余裕なのか。

ヴェルデの言葉に再度ベッドへと視線を移しながら考える。

「いやでもなぁ…君と添い寝…君と、煙草臭いからなぁ」

「さっきシャワー浴びただろう
まぁ、拒否をしないということはいいということだな?」

うーんと腕を組みながら考え込むマーモンを他所に、ヴェルデは立ち上がってベッドへと向かい腰掛けると片手をスッと伸ばした。

「来い」

「ムムムム…」

…まぁ、いいか。

マーモンは少し考え込んだ後、小さく息を漏らしながら立ち上がりヴェルデの目の前にスッと立ち止まる。

「なんか、気恥ずかしいんだけど」

「まぁ、添い寝などしたことがないからな」

恥ずかしがっている自分とは正反対に平然としているヴェルデに、怖気づいてしまいスッと一歩後ずさる

「…や、やっぱりやめ…むぎゃっ!」

フイッと顔をそらすとバッと腕を掴まれてそのまめ勢いよく引かれてしまい、バランスを崩しながらヴェルデの腕の中に収まってしまう。

「な…」

「ふむ、やはり収まりがいい」

手を腰と後頭部へと回し抱きしめながらヴェルデはサイズ感を確認する。
抱きしめられたマーモンはピタリと動きを止めてしまう。

こ、れは…どうすればいいんだろう。

「え…っと」

困ったように眉を下げながらヴェルデを見ると、視線に気づいたヴェルデが視線を合わせた。
お互いの視線が混じり合うとマーモンは恥ずかしそうに視線を逸らした。

「どうした、そんな初みたいな反応をして」

「いや…君とこういう事したことないから恥ずかしいと言うか、むず痒いというか…」

「ただ私の抱き枕になるだけなのだから、そこまで気にすることはない」

「…」

今、抱き枕って言った?










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