2人だけの
「なー、マーモン」
「…なに?」
あるアジトの一角。
マーモンは珍しく隊服ではなくスーツを身に纏っているベルに声をかけられて返事をした。
ベルは首元を締め付けているネクタイがイヤなのか、少し緩め始める。
「ねぇ、まだ任務中なんだからしっかりして」
「別にいいじゃん、まわりに誰もいないんだし」
「だめ、ほらネクタイつけ直してあげるから」
"んべ"と舌を出しながら断るベルをなだめながらマーモンはベルの緩んだネクタイへと手を伸ばし、慣れた手つきで付け直し始める。
「俺等さ、クリスマス前からここ潜入してるじゃん?」
「クリスマス…あぁ、そんなものもあったけ」
「んで、今日は大晦日」
「そうだね、それが?」
「クリスマスも大晦日も何もなしかよって思って」
「それは仕方ないんじゃない?
僕ら以外で出れる幹部いなかったし
僕は休日手当で報酬増えるからいいけど、君からしたら嫌かもね」
「うん、すんげぇ嫌
しかも今回の任務は情報収集だけってのも嫌なんだけど、暇過ぎ」
"はい、終わり"とポンッと軽くネクタイを叩きながらマーモンがベルを見上げると不満そうな表情で口をとがらせているのが見えた。
まぁ、ベルは情報収集とかあまり好きじゃないもんな。
殺しは今回の任務ご法度だし。
それに、ベルはイベント事好きだからなぁ…ほんと、そういう所は年相応というか。
「欲しい情報はあらかた入手出来たし、そろそろ退散してもいいかもね」
マーモンは自分のスマホを手に取り、自分とベル、2人が入手した情報を確認しながらスクアーロへと連絡を取る。
「もしもし、スクアーロ…っと」
耳に手を当てているとベルが体重をかけて寄りかかってきて思わずよろけてしまう。
受け止めながらベルの頭へと手を伸ばし、あやすように頭を撫で始める。
「今情報送ったけど見てくれた?
うん、もうあらかたね…うん…だからそろそろ引き上げてもいいかと思うんだけど…ベルも飽き始めていつ暴れるか分からないし」
「暴れるは余計じゃね?」
マーモンの一言に異議を唱えるも、"シーッ"と人差し指を唇に当てられベルは黙ってしまう。
それを確認してからマーモンはスクアーロと一言二言交わした後、通話のボタンを切った。
「ベル、帰ろ
スクアーロから許可降りたから」
「うししッ、まじで?んならどっかで暴れてかーえろ」
許可が降りベルは先ほどとは打って変わり表情を輝かせながらマーモンから離れて頭の後ろで手を組んだ。
「暴れて帰るのは止めようよ
その代わり、クリスマスパーティ出来たかった分美味しいものでも食べようよ
ルッスーリアが用意してくれてるみたいだから」
「ふぅん…パーティ…マーモンはいいのかよ」
「ム、なにが?」
先に歩いて行ってしまうベルを少し足早に追いかけながらマーモンは言葉の意味が理解できずに首を傾げる。
「王子と2人っきりのパーティじゃなくてさ」
「…なに?ベルは僕と2人きりがいいの?」
マーモンはベルの言葉にきょとんとした後にタタッと目の前に回り込み、口元に笑みを浮かべながらベルの顔を覗き込んだ。
「案外可愛いこと言うじゃないか、ベル
僕と2人きりがいいだなんて」
「別に王子は言ってねぇよ」
「はいはい、わかったよ
それならどこかホテルでも…って思ったけどこの時期じゃどこもいっぱいだよね」
「おい、聞けって」
「聞いてるよ、聞いた上で話してるのさ」
スマホの画面を見ながら操作をするマーモンだったが、ベルに手首を掴まれてチラリと横目で見る。
「だーから、王子は」
「…あのね、ベル」
スマホをしまい、マーモンはベルの耳元へと顔を近づけてコソッと耳打ちをした。
「僕も、君と2人でしたいから…なんだけど」
「…!」
「…ほら、ベル行こ
あまりここに長居しすぎるのもよくないから」
ぽかんとしながら先に歩き出すマーモンの背中を見つめるベル。
それを少し眺めた後にニンッとはにかみながらマーモンの後を追った。
「…お前がしたいだけじゃん、馬鹿マーモン」
「うるさいなぁ、いいだろう?たまにはさ」
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