甘いものは苦手だが?
「あ、珍しい
デスクの上に書類ないなんて」
部屋の扉がノックされ、スクアーロが"入れ"と促すと中に入ってきたマーモンが発した第一声はそれだった。
「最近は書類が少なかったからなぁ
そのおかげでゆっくりできたぜぇ」
「そんな君にお届け物」
んーっと背伸びをしながら立ち上がるスクアーロを他所に、マーモンはドサッと紙の山をデスクへと置く。
「…」
「本部に立ち寄ったら追加もらっちゃって…寄らなきゃよかった」
"ふー"と書類を持つのが重かったのか肩をぐるぐると回すマーモン。
スクアーロは口角を引くつかせながら書類を見つめた。
「まぁ、期限はまだありそうだし
明日からでもいいんじゃないかな?」
書類の多さに絶望しているスクアーロに見向きもせず、マーモンはポフッとソファーへと座る。
「はい、これ報告書」
「…はぁ」
別でスクアーロに渡す予定であったであろう報告書1枚をマーモンは差し出すと、スクアーロはため息をつきながら受け取り隣へと座った。
「マーモン」
「分かってるよ、あとで付き合ってあげる
さっきも言った通り、まだ期限はあるんだから急がなくていいでしょ?
そんな疲れ切ってる君にいいものあげる」
「あ"?」
マーモンは懐からお菓子の箱を取り出し、スクアーロはジッとそれを見つめた。
「甘いもの食べたら少しは頭冴えるんじゃない?」
そう言いながらマーモンは封を開け、ポッキーのチョコ側を口にくわえる。
「俺はお前と違って甘いもん好きじゃねぇ」
「たまにはどう?
頭を働かせるのなら糖分摂取は必要だよ?」
「…」
サクッと音を立てながらマーモンはポッキーを齧り、その様子をスクアーロは横目で見る。
チョコがかかった部分はだんだんと面積を減らしていく。
…あれなら…。
「ムム、そんなに見て…やっぱり欲しいんじゃないか」
スクアーロの視線に気付いたのか、マーモンは残りの部分を口に咥え声をかけ、袋から一本のポッキーをスクアーロへと差し出した。
「はい、あげ」
「そっちはいらねぇ」
「…?どういう」
マーモンの言葉を遮り、スクアーロはマーモンの片手を掴んで引き寄せて顔を近付ける。
「あ、え」
突然の行動にマーモンは驚きの声を漏らすも、スクアーロはお構いなしにそのまま咥えていた残りに齧り付き、サクサクと音を立てながら咀嚼をして顔を離した。
「…ん、こんぐらいの甘さなら丁度い…どうしたぁ?」
「…っ…き、君ってやつは…」
自分の口端を指で拭っていると、マーモンがぽかんとした表情をしていることに気付いて声を掛ける。
すると、マーモンの顔色がだんだんと赤くなっていきスクアーロをキッと睨み上げた。
「そんな怒らなくてもいいだろがぁ
あとで一箱買って倍以上にして返してやるからよ」
「それで怒ってるわけじゃない…馬鹿アーロ」
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