お菓子を貰えるイベントだと聞いて
「…毎回毎回言って悪いんだけどさ」
マーモンはデスクに乗せられている書類の山を見て口を開く。
「こんなに溜めるの、本当に良くないと思うんだけど」
はぁ、と深いため息をこれ見よがしにスクアーロの目の前ですると、書類の山をひと山抱えてテーブルへと移動させてドサッと音を立てながら置いた。
「う"ぉぉい、毎回毎回言わせるなぁ」
マーモンのため息を真似するかのように"はぁぁ"とスクアーロは口から漏らした。
「本来これは俺に仕事じゃねぇ、ボスさんの仕事だ
それなのに俺の仕事+ボスの仕事やってりゃ溜まるに決まってるだろぉ」
「…まぁ、元々君はこういう書類仕事向いてないし仕方がないか」
テーブルの前のソファーに腰掛け、マーモンは1枚書類を手に取った。
「手伝うよ、あまり溜めすぎると本部になにを言われるかたまったもんじゃない」
「わりぃな…あとで報酬振り込んでおく」
「Sランク分でいいよ」
「…珍しいじゃねぇか、お前の事だからもっと取るかと思ったが」
「人の善意をなんだと思ってるんだ
そう言うんならお望み通りもっと取ってやろうか」
「冗談だぁ、…っと、その代わりと言ったらなんだが」
スクアーロはふとなにかを思い出したのか立ち上がり、棚の中からなにかを取り出してマーモンに差し出した。
「…なに、これ」
「クッキー、お前食うだろ?やるよ」
「クッキー…」
箱を受け取り、付けられたリボンを解いて中を見ると様々な種類のクッキーが中には入っている。
「あ、けっこう美味しそう
君がこんなの持ってるなんて珍しいね」
「貰いもんだが、俺はあんまり甘い物食わねぇから」
「なるほどね、てっきり今日ハロウィンだからだと思ったよ」
「ハロウィンだぁ?」
「あれ、知らなかったの?
今日は10/31、ハロウィンだよ」
頭に?を浮かべているスクアーロにマーモンは壁にかけられているカレンダーに顔を向けた…が、それは7月のままになっており、マーモンは固まった。
「…また君は…」
「…別にカレンダーなんて、捲っても変わらねぇだろ」
「変わるよ、まったく…
まぁ、いいや…君のそういうところは今に始まったことではないし」
「う"、なんだその諦めた感じは…」
「"感じ"じゃなくて諦めてるの…っと……そういえば」
スクアーロにお菓子もらっといて、自分はあげないっていうのもなぁ…。
彼の事だから気にはしないだろうけど…。
マーモンは自分のデスクの椅子に戻っていくスクアーロをチラリと見る。
…そもそも、2人きりになること自体1週間ぶり位か。
僕ほとんど任務だったし。
…久々の、2人きり…。
「…ねぇ、スクアーロ」
「なん…って、どうしたぁ?」
声をかけられ顔を向けるといつの間にかマーモンが目の前に立っており、スクアーロは持っていた書類をデスクへと置いた。
「…いや、ハロウィンだけど…僕は生憎お菓子を持ってなくて」
「あ"ぁ?別にんなもん気にしなくていい」
「そうじゃなくて…いや、うん」
少し恥ずかしげにぶつぶつと呟いていたマーモンだったが、ギシッと音を立てながらスクアーロに向かうように太腿の上へと乗る。
「おい、退」
「…スクアーロ」
「…お菓子あげられないから…僕のこと、悪戯しても…いいよ」
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