お菓子を貰えるイベントだと聞いて


「トリック·オア·トリートッ!
お菓子くれなきゃ、いたずらするぜ?」

「!」

任務の無い休日。
自室で先日振り込まれた金額が記入された通帳を見ていると、勢いよく扉が開かれてビクッと体を跳ねさせる。
意気揚々とした声色でベルと判断したマーモンが顔を向けると、いつもとなにか違う。
よくよく見ると、頭にもふもふとした犬の耳のような物がついている。

「…なに、その格好」

「うししッ、狼男
かっこよくね?尻尾もついてんぜ?」

ベルが後ろを向くと耳と同様の灰色の尻尾が視界に入る。

「そうだね、かっこいいと思うよ
王子様の君にすごい似合ってる」

「だろ?」

「そういうわけで、僕今忙しいから」

適当にベルを褒めた後にマーモンはスッと通帳へと目を移すと、ベルはムスッとしながら通帳を取り上げた。

「ちょっと、なにさ」

「トリック·オア·トリート!
お菓子よこせって言ってんだけど!」

「お菓子?お菓子ならルッスーリアから」

「ちーがうって!ハロウィン!」

「ハロウィン…あぁ」

ベルの言葉で今日がハロウィンである事を思い出したマーモン。

「まったく、君もまだまだ子どもだね
そんなイベントで喜ぶなんて」

「うるせぇな、お前王子と絶対変わらねぇだろ」

「君よりも年上なのは確かかな」

「ほら、ベル
ルッスーリアのとこ行ってお菓子貰いに行こ?」

「いやいや、待てよ」

ピョンッと座っていた椅子から立ち上がりベルの横を通り過ぎようとすると肩を掴まれて動きがピタリと止まる。

「ムム、なにさ
君がハロウィンで騒いでるんだからルッスーリアもなにかしらお菓子を作ってるはず…」

「お前さ、俺の言ったこと忘れてね?」

「…?なに?」

「…かっちーん、王子の話聞いてないってことは、そういうことだよな?」

「え、なにをムギャッ!」

自分の話をまるで聞いていないことにベルは笑みを浮かべながらも怒りを顕にし、マーモンの首根っこを掴んで引きずり出した。

「ちょ、ベル痛い!痛いか…ぶべッ!」

寝室へと引きずられていきベルに静止するように声を掛けるも止まらず、そのままポイッとベッドへと投げられ顔面から落ちたマーモンは痛みから顔を手で押さえた。

「いッ…たた…」

「うししッ、お菓子くれないってことは悪戯していいってことだよな?」

「ムッ」

トンッとマーモンに詰め寄りながらベルは悪戯っぽい笑みを浮かべる。
その表情と距離にマーモンは驚き瞳を丸くした。

「い、悪戯って…待ってよ、いきなり言われても」

「ばーか、王子部屋に来た時から言ってんじゃん?
トリック·オア·トリートってさ」

「しかも、悪戯ってなにを」

「王子の話をろくに聞かないで、自分の通帳眺めてるお前がわりぃんだよマーモン?」










「さぁて、どうやって悪戯してやろうか」











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