お菓子を貰えるイベントだと聞いて
「ハロウィン?」
ヴェルデの研究所。
いつものようにヴァリアーの任務の休日にやってきたマーモンが発した言葉にヴェルデは珈琲を飲みながら言葉を繰り返した。
「そう、ハロウィン
君の場合、仮装はフランケンシュタインかマッドサイエンティストが似合いそう」
「フランケンシュタインはともかく、現時点でマッドサイエンティストだから無意味だな」
「あ、自覚はあるんだ…」
「そこまで馬鹿では…おい、なんだそれは」
「厶?」
ふと自分に寄りかかっているマーモンに目をやると、なにやらぬいぐるみを持っていることに気付いた。
よくよく見ると、それは自分を模したもので肌が所々継ぎ接ぎになっており、頭部には大きめなネジが刺さっているかのようなフランケンシュタインの仮装をしている。
「そんなものいつの間に」
「幻術で作った、可愛いでしょ」
むふーと満足げな表情のマーモンとぬいぐるみを交互に見るも、可愛いという発言には同意が出来ないのか眉間に皺を寄せた。
「…お前の美的センスは分からん」
「おじさんと若い僕とでは違うからね」
ヴェルデの言葉に少しムッとしながらマーモンはフイッと顔をそらしてしまい、ぬいぐるみを嬉しそうに見つめだす。
「…おい」
「なに…あ」
ぬいぐるみに目を向けた状態でマーモンが返事をすると、それをヒョイッと取り上げられて渋々ヴェルデへと顔を移した。
「返してよ」
「本物よりも、そんな布と綿で形成されたもののほうがお好みか?」
「布と綿って…そもそも幻術…」
ヴェルデの発言にマーモンはピンッとなにか察し、口元に笑みを浮かべながらヴェルデへと顔を近づけた。
「もしかして、妬いてるの?
布と綿で出来たものに」
「妬いていない、ただ面白くないだけだ
勝手に人の元へと来たと思えば、ぬいぐるみにうつつを抜かしているお前の姿に」
「それを妬いているっていうのさ
君も案外可愛いところがあるじゃないか」
パチンッと指を鳴らすとぬいぐるみは姿を消し、マーモンは"んふふ"と嬉しそうに笑っている。
「少しは、僕の気持ちがわかったかい?
実験にうつつを抜かしてる恋人に放置されている僕の気持ちが」
「…わかるわけがない」
「素直じゃないなぁ」
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