お菓子を貰えるイベントだと聞いて


「マーモン、今日はハロウィンですよハロウィン」

「ムム…あぁ…もうそんな時期なんだね」

ソファーの自分の隣に座っている風の言葉にマーモンは壁にかけられたカレンダーを見る。
日付は10/31を指しており、マーモンはポツリと呟いた。

風の事だから、たくさんのお菓子が用意してあるんだろうな…おやつ代が浮くのは助かる。

「風」

「マーモン」

早速風にお菓子を催促しようとすると被せるように名前を呼んできてマーモンは驚いた。

「え、なに?」

「ふふッ」

風はにこにこと微笑みながらマーモンへと近付いた。










「トリック·オア·トリート」

「…え?」











「え?ではありませんよ
貴方が意味が分からないわけないですよね?」

依然として微笑んでいる風を見てマーモンはハッとした表情を浮かべた。

「あ、ああ…そりゃ、わかっているけどさ
まさか君に言われるとは思っていなくて…そもそも、今日がハロウィンって事も忘れていたから手持ちが…」

迂闊だったな、まさか風に言われるとは…。

「待ってください」

「?」

マーモンは"うーん"と考えながら立ち上がり、自分の部屋のお菓子を探そうとすると風に服を掴まれて顔を向けた。

「どうしたの?
お菓子なら今用意を…」

「私は今すぐ欲しいのですが…一刻も早く」

「ッ!」

腰に手を回されて抱きしめられ、甘えるような声色で言いながら見上げられるとマーモンはビクッと体を跳ねさせて視線をそらす。

「だから、今探すって」

「それではだめですよ、遅いです」

「ムム、遅いって…君が突然言うから」

「マーモン、もしや私にお菓子を強請られるとは思っていなかったのでは?
いつものように私にお菓子をもらえると…そう思っていたのでしょう?」

「…いや、それはまぁ…君、今まで僕に言ったことないし」

「それは、貴方に喜んで欲しいが為の事ですから」

「それに、君の場合お菓子よりも普通の食事の方が好ましいし」

「まぁ、そうですね
お菓子ではお腹いっぱいになりません」

「なら」

「ですが、たまにはこういうイベントにのってみるのもいいかと思いまして
そういうことなので、お菓子をください」

「ムムム、だから、今はな」

「ならばする事は1つです
お菓子をもらえないとする事…」

「ん」

瞳を細めながらマーモンを見、服の裾から手を入れて直に肌に触れる。
くすぐったさからマーモンは身を捩り、風の肩へと手を置いた。

「ちょ、ちょっと待って
部屋の中探せばあるから!」

「言ったでしょう、マーモン」










「一刻も早く欲しいです、と」










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