いつから抱いた恋心
「…マーモ」
「待って」
マーモンからの告白を聞いた後、声をかけようとするスクアーロだったが、マーモンから制され口を閉ざした。
「別に、僕は君に気持ちを伝えたからと言って返事を聞きたいとか、交際したいとかそういう訳ではないんだ
だから、なにも言わなくていいよ」
「…なんでだ?」
「なんで…って…」
「俺の気持ち、聞かなくていいのか?」
「ッ…?」
マーモンを抱きしめている力が強まるのを感じ、マーモンは瞳を丸くしながらスクアーロを見上げる。
スクアーロは真剣そうにマーモンを見つめており、思わず顔をそらしてしまいそうになる。
「こっち見ろ」
マーモンの様子に気付き、スクアーロは言いながらマーモンの顎に手を添えて自分の方へと向き直させた。
「随分と自分勝手じゃねぇ、マーモンよぉ
人の事散々避けてたくせにいきなりそんな事言って、挙げ句には俺の話を聞かねぇってな」
「そ、そういう訳じゃないよ
ただ…ムムム…聞くのが怖いと言うか…」
「怖い?」
「だって、君が僕の事をどう思ってるのかなんて怖くて聞けるわけないだろう?
君は案外優しいから、僕の行動に付き合ってくれてるだけであって…
それなのに、君の本心を聞くなんて、僕が本当は君にどう思われてる、なんて怖くて聞けない」
「ならなんで言ったんだ」
「それは…今の状況はお互いの為に、よくないから
僕と君はヴァリアーの幹部の中でも上の方でよく活動について話し合っていた
だけど、君への好意に気付いてから中々そういう…というか、君とうまく話ができなくなっちゃって
仕事にも支障が出ちゃったからね
流石に今後もこんな感じだと組織として成り立たなくなってしまう
…ベルにも、迷惑かけちゃっているし」
「…」
「とにかく、僕はそれが言いたかっただけ
勝手な事言ってるのは分かってる
こういう私情は出さないようにするから、今後もビジネスパートナーとして」
「…あいつの言う通り、随分と鈍い野郎だ」
「え」
ぽつりと呟くスクアーロの言葉を聞き返そうとすると、自分の顔の目の前にスクアーロの顔がアップで映り込んでいる。
それと同時に、なにやら唇に柔らかな物が押し付けられておりマーモンはぱちぱちと瞬きを繰り返す。
あれ、僕…今…。
スクアーロに、キス…されてる…?
「…お前、すげぇ勘違いしてねぇか?」
「…え?」
数秒間お互いの唇が重なり合った後、スクアーロは唇を離しながら真っ直ぐな瞳でマーモンを見つめる。
「俺の事、優しいとか言うが誰にでもこういう事しねぇからな?
もしボスがお前みたいに俺のせいでトラウマになったとしても、慰めやしねぇし添い寝もしてやらねぇ」
「いや、それはボスと君との関係性がそうであるからで」
「てか、俺の事優しいって思うのはてめぇだけだぞ?
俺のどこを見たら優しいんだか」
「…君は一体、何が言いたいのさ
僕の考えを否定したいみたいだけど」
「てめぇの考えを否定するわけじゃねぇ」
「ッ」
スクアーロの言葉に訝しげな表情を浮かべながらマーモンが問いかけると、スクアーロの顔がズイッと近づいてくる。
再度、お互いの唇が触れ合ってしまうのではないかと思うほど、近くに。
「スクア」
「お前は俺が、誰彼構わずこういう事すると思ってんのか?」
「ひ…ッ」
かぷりと唇に噛みつき、チュッと軽く吸い付かれる。
思わず声が漏れ出てしまい、マーモンの顔に熱が集まるのがわかった。
「添い寝して、抱きしめて、お前のこと寝かしつけてる間無防備に寝やがって…俺の気持ちも知らずによぉ」
「え、ぁ…スクアーロ…?」
低い声で耳元で囁かれ、マーモンの心拍がドクドクと上がっていくのを感じる。
恐る恐る見てみると、ギラリと瞳がぎらついておりビクッと体が跳ねてしまう。
「マーモンよぉ」
「これでも俺の気持ちが分からないほど、てめぇは鈍くねぇよな?」
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