いつから抱いた恋心


「ほらよ」

「ム…ありがと」

ソファーに腰掛けて冷蔵庫を漁っているスクアーロを観ていると、スクアーロは水の入ったペットボトルを差し出してきてマーモンはそれを受け取った。
水を一口含んで飲み込んで一息をつく。

「そんで、俺に話ってなんだ?」

スクアーロもマーモンの隣に座り、足を組みながら本題を口にする。

「…」

「…お前、最近は寝れてたのかぁ?」

「ッ!」

黙り込んでしまうマーモンを見かね、スクアーロは一呼吸置いてから話題を変えてみた。
マーモンの顔を覗き込んで確認をしてみると、ビクッと体を跳ねさせて驚いたように瞳を丸くしているのが見える。
パッと見、以前見たような隈は出来ていない。

「…あんまり、見ないでよ」

「ちょっと大人しくしてろぉ」

「ムムッ」

恥ずかしげに視線をそらすマーモンの頬に手を伸ばして目元を拭ってみる。
しかし、なにも変化はない。
それを確認するとスクアーロは安堵の息を漏らした。

「幻術…ってわけでもなさそうだな」

「ち、ちょっと」

「寝れてるんならよかったが、どうして眠れるようになったんだ?
あれだけ俺がいなけりゃ眠れなかったってのに」

「スクアーロ」

「あ"?なん」

名前を呼ばれて顔を向けると異様にマーモンの顔が近い。
いつの間にか近づきすぎてしまっていたらしい。
フードの影になっていてわかりにくいが、マーモンの顔が赤くなっていることを気付く。

「…ち、かいん、だけど…」

「…ぶはッ」

目を泳がせながら言う様にスクアーロは少し黙り込んだ後に吹き出した。

「ムムッ、なんで笑うのさ」

「すまねぇ、今更な事言うから可笑しくてよぉ
お前、俺と寝てる時はこれ以上距離近かったくせになにを今更、ってなぁ」

「むむむ…そ、それは…今と前とじゃ理由が違うっていうか…」

「なにが違ぇんだ?」

「ッ…それよりも離れて
やたら今日は距離感が近いな、君は」

「こうでもしねぇと、お前がまた逃げるからだ
捕まえとくしかねぇだろ」

「むぎゃッ」

スクアーロは立ち上がりマーモンの首根っこを掴むとずるずると引き摺り、寝室へと連れてくるとそこにマーモンをヒョイッと軽々と投げ捨てる。
微かに腰に走る痛みに表情を歪めていると、スクアーロは隣へと横になり、マーモンにも横になれというような視線を向けてきた。

「…」

その視線から少し困ったような表情を浮かべながらマーモンは少し距離を取って渋々横になる。

「おい」

「…なに」

「遠い、もうちょい来いよ」

「…」

「前まではゼロ距離だったろ?」

「…だから、今と前じゃ色々と違うわけで」

「違わねぇよ、俺の中ではな」

「ッ!」

グンッと片腕を引っ張られるとスクアーロはそのままマーモンを腕の中へと入れてしまい、背中に手を回して抱きしめる。

「お、おいスクア」

「今までお前の添い寝に散々付き合ってんだ
こんぐらいしても罰は当たらねぇはずだろ」

「ッ…それは…そうだけど…」

「…なんで俺の事を避けてた?」

返す言葉が見つからず、マーモンがスクアーロの服に手を伸ばして掴もうと、スクアーロの言葉が耳に入りその手をピタリと止めた。

「俺の行動を思い返しても特にお前に何かしたなんてことはねぇ」

「…」

「だが、このままって理由にもいかねぇだろ?
任務の連絡報告もろくに出来てないしな
もし、お前になにかしたとかそういう理由があるんならはっきり言え」

諭すような言い方でマーモンの頭を優しく撫でながらスクアーロが問いかける。

「…君は何も悪くないさ」

しばらく2人の間に沈黙が流れ、それを割くようにマーモンは口を開いた。

「ごめん、不快な思いをさせたね」

「まったくだぁ、いきなり人の事避けやがってよぉ」

「…うん、ごめん」

スクアーロの胸板に顔を押し付けたままマーモンが小さな声で謝り、ぽつぽつと言葉を続け始める。

「…スクアーロ」

「…なんだぁ」

「…君の場合、長々と話すよりも直球で言ったほうがよさそうだからさ…言うよ」









「…僕…君のことが、好き…みたいだ」









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