いつから抱いた恋心
「…ったく、ベルの野郎…」
ベルの部屋から出て自室に戻る最中、スクアーロはベルとの会話を思い出す。
「…あんなもん、とっくにわかってたんだがなぁ」
口から漏れ出るため息に、思わず歩みが止まってしまう。
マーモンが俺に好意を抱いていた事は、もう随分と前から分かっていた。
随分と前、と言っても俺の心臓移植が済んでしばらくしてからわかったことだが。
最初は、あいつが依頼したことで虹の代理戦で俺やボス、他の奴等が深傷を負ったことに対する罪悪感。
自分の不甲斐なさ。
プラス、俺が心臓を無くしたことでトラウマになったのかと思っていた…が、蓋を開けてみりゃ違かった。
はっきり言って、赤ん坊の頃のあいつに仲間意識どうこうなんて持ち合わせていなかったしな。
"お金が貰えるなら、いいよ
だけど、僕を使いこなすのであれば相当な金が必要だけど…お前達に、用意できる?"
任務の対価で金がもらえる。
ただそれだけであいつはヴァリアーに入隊。
それから一緒にやってきてはいたものの、あいつは誰一人も信用せずに、どこか一線を引いてきた。
…そんな奴がなんで。
「…俺を好きでいるんだか」
下世話な話だが、ベルと行動する事が多かったからか2人の距離感は近かった。(大体はベルに振り回されているのが多いが)
だから、好意を持つのであればベルの方だと思った。
思ったのだが…。
「考えても仕方ねぇか
とりあえずあいつを捕まえて話を」
止めていた歩みを再び進めて自分の部屋へと近付いていく。
すると、自分の部屋の前に見覚えのある人影を見つける。
「…むむむむ」
なにやら悩みながら部屋の前を行ったり来たりを繰り返すマーモンの姿。
気配を消して様子を伺うも、やはり気付いていない。
いつもなら勝手に入ってんのに珍しいな。
一体なにしてんだ、部屋の前でよぉ。
「…スクアーロいなさそうだし…やっぱり一旦戻ろう」
何往復かした後、マーモンは深いため息をつきながら部屋から離れようと踵を返す。
バチッ。
「「あ」」
ふと2人の目が合いお互いに声が出る。
「…」
少しの間沈黙が流れる。
すると、マーモンはスクアーロからススーッと気まずそうに顔をそらしたと同時に体から霧が漏れ出ていた。
「待て」
「ムムッ」
逃げられる。
本能的に察したスクアーロはガシッとマーモンの腕を掴んだ。
掴まれたことに驚いた表情を浮かべながらマーモンはスクアーロに顔を向ける。
「…なにさ」
「お前、俺に用があって来たんだろ」
「それは、まぁ…
でもいないみたいだったしあとでまた来ようと」
「その俺が、戻ってきたんだから戻る必要ねぇだろ」
「…そうだけど…」
スクアーロの言葉に反論できず、マーモンは俯いて口ごもってしまう。
「…僕」
「マーモン」
「?」
名前を呼ばれて少し顔を向けるとスクアーロはマーモンから手を離して扉へと手をかける。
「とりあえず、中入れ
話はそれからだ」
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