お別れするのが切なくて


「…結局、今日も泊まることになっちゃったじゃないか」

「あん?」

シーツにくるまり、少し疲れた表情のマーモンはベッドに腰掛けて煙草を吸っているリボーンを見上げた。
声をかけられたリボーンは煙草を灰皿へと押し付けて火を消す。

「なんだ、不満そうだな」

「当たり前だろう?僕帰るって言ったのに」

「その割に俺にくっついて求めてきたのはどこのちびだよ」

「それは…そうだけど」

先程までの情事を思い出し、マーモンは口を閉ざして枕に顔を埋めた。

「それにお前、本当は帰りたくなかったんだろ?」

「…」

「自分から帰るとか言いながら俺が離れないようにと服掴むしよ
そんなに俺といたきゃいればいいだろが」

「…」

「つか、別れ際にそう思うんなら最初から俺に触れろよな、こうやってよ」

文句を言いながらマーモンの片手を掴むと少し身を屈めて自分の頬に触れさせる。
すると、マーモンはチラリと顔を向けリボーンの顔に触れている手を少し滑らせた。

「…はぁぁ」

「おい、イケメンに触っといてため息つくなよ
そこは喜べ」

「いや、うん…君はそういう奴だもんね」

「あ?」

マーモンは深いため息をつきながらリボーンの顔から手を離して再び枕に顔を埋めてしまった。
その言動に理解が出来ないリボーンは隣へと横になるとマーモンの頭に手を伸ばして髪を梳くように撫で始める。   

「僕はイタリアにいるし、君も基本的にはジャッポーネにいて仕事の内容によってはしばらく会えないだろう?」

「まぁ、そうだな」

「それに、君には愛人もいるし」

「それ関係あるか?」

「今回みたいに一ヶ月とか会えない時もある
まぁ、別にそれを承知の上で君と付き合ってはいるんだけもね
君と会えるのは…嬉しいんだけどさ…あまり君に触れると…離れるのが嫌になるんだよね、寂しくなっちゃうから」

「…」  

マーモンの口から語られる言葉にリボーンは瞳を丸くする。

「だからあんまり僕から君に触れることはしないんだよ
君は愛人がいるから僕に対して"離れたくない"とか"会えなくて寂しい"とか、そういうことは思ってないだろうけ…ど…」

淡々と告げていたマーモンだったが、リボーンの表情を見てフイッと顔を逸らしてしまう。

「…なにその顔」

「いや…お前、そういう感情持ってんだなって」

「失礼だね、君
でもまぁ、君の言う通りだけどさ
こんな僕だけど人を好きっていう感情はあるみたい」

少し淋しげに微笑むマーモンを見てリボーンは口元を手で覆い隠しながら視線をそらし、"あー…"と声を漏らした後にマーモンに手を伸ばして抱き締めた。

「ッちょっと、苦しい」

「うるせ、触らせろ」

「君ね、さっきの僕の話聞いた後にそんなことするのは意地悪じゃない?」

マーモンは唇を尖らせながら言うもリボーンの背中に手を回して抱きしめ返し、首筋に顔を埋める。
 
「なら、今のうちに俺の事たくさん触れよ
飽きるくらいに」

「なにそれ」

「そしたら、離れてる間も俺に触れてる時の事思い出して寂しくねぇだろ?」

「…それ、逆効果だと思うんだけど…って、ねぇ、どこ触ってるの
僕もう流石に無理なんだけど」

リボーンの手が腰へと移動し、いやらしい手つきで触られ思わずマーモンの腰がビクッと跳ねてしまう。
その手から逃れようと腰を引くマーモンだが、逃さないと言うように寄せられてしまった。









「お前が可愛いこと言うからだろ
ほら、お前が寂しい思いしねぇように抱き潰してやる」

「…明日帰る体力は残しておいてくれる?」










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