いつから抱いた恋心
「…ん…」
ふと目を覚ましたマーモンは朦朧とする意識の中視界に映る天井をボーッとしながら見つめた。
僕は…確か…ベルと任務で…。
「ッ!」
自分の行動を思い出し、マーモンは反射的にガバッと勢いよく上体を起こす。
そうだ、ベルと任務をしてたんだけど幻術使い過ぎて気を失っ。
「いたッ!」
不意に走る頭の痛みに頭を手で抑えながら少し周りを見渡してみる。
僕の部屋、じゃないな…ここは…。
「…スクアーロの部屋…なんで…」
「正解だぁ」
「!」
現状を理解しようと考え込んでいると隣から声が聞こえ、驚きながら顔を向けるとスクアーロが自分の横で寝転がっていることに気付いた。
マーモンの視線に気付いたのか、スクアーロはマーモンと同じように上体を起こす。
「…え、なんで僕君の部屋にいるの?」
「ベルが任務終わりに気絶したお前を連れてきたんだよ
ったく、ずいぶんと無茶したみたいじゃねぇか」
「ムムム…無茶は別に…」
「してんだろうがぁ」
スクアーロは少し距離を詰めるとマーモンの頬に手を伸ばし、目元にある隈を指でなぞった。
「お前、俺に嘘ついたな?」
「嘘ってなんの…!」
最初はなにを言っているのか分からなかったマーモンだが、目元に触れられハッとして思わず距離を取ろうとする。
しかし、スクアーロに腰に手を回されて捕らえられてしまい逃げそびれてしまった。
「離して」
「離したら逃げるだろがぁ
マーモンよぉ、なんで嘘ついた」
「…」
「お前、この隈2日やそっとで出来るもんじゃねぇよな?
2日前に会った時、隠してたってことになるが」
「…」
「う"ぉぉい、黙ってちゃわからねぇだろ
別に怒ろうとしてるわけじゃねぇんだからよ」
だんまりを決め込むマーモンの様子に少し口調を柔らかくしながら目元を撫でていた手を頭へと移動させて優しく撫でる。
すると、マーモンは少し上目でスクアーロを見た。
「…だって…君のことだから、心配するじゃないか」
「あ"?」
「君、意外に心配性な所あるから
まぁ、それに甘えていた僕にも原因はあるけど…あぁ…もう…なんて言えばいいんだ…」
マーモンは思った事が言葉に出来ず、自分の頭を掻きむしった後にポフリとスクアーロの胸に自分の耳を当てる。
心臓の鼓動が一定のリズムで聞こえ、その音に安堵の息を漏らす。
あぁ…そうだ…僕は…。
スクアーロのこの音が…。
この鼓動が…。
"本当に求めているのは、これだけ?"
"僕が求めているのは…"
「ッ!」
自分の口から零れ出そうになる言葉を抑え込むようにマーモンは口元を手で咄嗟に覆い隠した。
「マーモン?」
マーモンの行動を見てスクアーロは顔を覗き込む。
マーモンはぷるぷると肩を震わせながらスクアーロを涙目で見つめた。
「なんだぁ、吐きそうかぁ?」
「ッちが…僕…」
「おいおい、どうした?落ち着いて話してみろぉ」
あやすような口振りでスクアーロはマーモンの背中へと手を回して優しくぽんぽんと背中を撫でる。
「ム…ッう…うぅ…」
「安心しろぉ、もう俺は死んだりしねぇ
まぁ、約束は出来ねぇがな」
自然と瞳からぽろぽろと涙が出てくる。
止めようにも止められず、マーモンは声を漏らしながらスクアーロにしがみついた。
それに答えるようにスクアーロは話しかけ、抱きしめる力を強める。
あぁ…そうだったんだ…。
なんで僕、スクアーロがあの時胸を貫かれて、眠れなくなってしまうほどトラウマになっていたのか不思議だった。
ただの同じ組織内の、幹部という関係なだけなのに。
だけど、今、気付いてしまった。
スクアーロの鼓動が無ければ眠れない、そう思っていた。
だけど、それは大きな間違いだったんだ。
僕は…。
いつからかわからないが、スクアーロに恋をしていたんだ。
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