おかしなお菓子にご注意を
「…別に」
「ん?」
「僕は休憩なんてなくても、いいんだけど」
一息をつきながらペットボトルへと口をつけようとした時、拗ねたような口調で声をかける雲雀へと風は視線を向ける。
すると、口調から分かってはいたが、やはりムスーッとした表情をしており、思わず笑ってしまう。
「休憩も修業の1つですよ
なるべくでしたら、万全の状態の貴方と戦い続けたいですし」
「僕はいつでも万全だよ」
「そのわりには少し動きが鈍くなっていましたが…気のせいでしたか」
「…」
「ふふ、意地悪が過ぎましたかね?」
「うるさい
次は地面に這い蹲らせてあげる」
「おや、それは期待しています」
そう告げると、雲雀は自分から少し離れ、近くの木に凭れるように座り込って瞳を閉じ始め、風は雲雀から視線を外すと"ふぅ"と小さく息を吐き、天を仰いだ。
…今日は、マーモンが六道骸に用があると言い(勝手に)ついてきて、終わるまで雲雀恭弥と手合わせをすることに。
用が終わるまでどのくらいかかるのかは定かではありませんが、明日明後日もマーモンはお休みの予定。
今日中にはおそらく終わるでしょうし、明日はマーモンとデートしましょうか。
どこにしましょうかね…。
以前は旅館に泊まって温泉を堪能しましたし、今度は遊園地…それか、また水族館でも…。
「…んふふ」
「ねぇ、気持ち悪いんだけど」
マーモンとのデートを妄想していると、自然と緩んでしまう頬。
その表情の変化に気づいた雲雀から冷ややかな視線と声がかけられる。
「いえ、マーモンとのデートを想像しましたら…つい」
「ふぅん…あの術士…ね」
「あ、マーモンは渡せませんよ?」
「別に興味ないよ、骸以外の術士には」
ふいッ、と顔をそらしながらきっぱりと告げる雲雀の発言。
…もしや今、惚気られましたかね?
「貴方は六道骸とデートしないのですか?」
「しないよ、する必要もない」
「おや、なぜです?
彼はマーモンのように引きこもるタイプではないですし、貴方と出掛けられるとなれば喜ぶのでは?」
「…喜ぶなら、なおさら外には出せないよ」
「…?」
「骸が喜ぶ姿を、みすみす他人に見せるわけにはいかないから」
…マーモンが喜ぶ姿…。
"ありがと、風"
「…なるほど…そういう考え方もあるんですね」
どことなく納得してしまい、ぽつりと声に出してしまう。
確かに、マーモンが喜んでいる姿は愛らしく、他人の目には晒したくない…しかし…。
「確かに、他人に見せたくないのはわかります
ですが、それ以上に…好きな人には、喜んでもらいたいではないですか」
「…」
「彼もマーモン同様に、甘い物が好きなようですし
デートをしないにしろ、そういう物を届けたりするだけでも、喜んでくれるのでは?
貴方からの贈り物だとすれば…なおのこと」
「…休憩は終わり」
風の言葉を聞いて、しばし黙り込んでいた雲雀だったが、立ち上がりながら声をかける。
「おや、もういいんですか?」
「別に元から疲れてない、君が言ったから仕方なくしてただけ
君のところの術士と骸がいつまで一緒にいるかは分からないけど、時間が惜しいからね」
「ふふ、確かにそうですね
こうして貴方と戦えるのは、滅多にありませんし」
「そういう割には、最近は多くなってるけど」
「それは、マーモンが六道骸に会う機会が増えて…」
シュッ。
「「ッ?」」
立ち上がり、ポンポンッとズボンについた汚れを払っていると、雲雀と風の間に小さな子どもが現れて2人は思わず身構えた。
…子ども…?
先程まではいなかったはずなのに、突然…。
「むむむ…ッ…」
片手を伸ばして唸り声をあげている子どもへと近付き、様子を見てみるも、どうやら集中しているのかこちらに気付いていない様子だった。
しばらく見ていると、子どもは"はぁ…"と疲れたように大きく息を吐いた後、顔を上げた。
「…ごめん骸、出来そうだったけど超能力は…」
どことなく、聞き覚えのあるような言い方…。
しかし、声は子どものように高い声色。
子どもは、言葉を言いかけるもまわりを見渡して"あれ…?"と不思議そうに声を漏らした後、目の前にいる風を見上げて驚いたように目を見開く。
自分を見上げるその顔。
頬にある逆三角のマーク。
藍色の大きな瞳。
先程言っていた、六道骸の名前と、"超能力"という単語。
「…あ…ッ」
…まさか…。
「マーモンと私の…愛の結晶…?!」
「…いや、僕男だし、出産経験無いんだけど」
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