おかしなお菓子にご注意を


『なんだ、どうした?』

スマホを操作してヴェルデへと電話をかけてみると、数コールの後に繫がり、ヴェルデの声が聞こえてくる。

「やぁ、ヴェルデ」

『…お前は誰だ?
マーモンから電話がかかってきたと思うのだが』

どうやら、声の違和感からヴェルデの怪訝そうな声が聞こえ、マーモンは小さく息を漏らした。

「あぁ、マーモンで合っているよ
なんなら、君の研究所の秘密扉のパスワードでも伝えようか?
もう何年も前だから、変わっているかもしれないけど」

『…ふむ、そこまで言うというのならばそうなのだろう
しかし、風邪でも引いたのか?
声色がいつもよりおかしい…まるで、変声期前の幼子のようだ』

「白々しい奴だな、君のせいなんだろう?
六道骸に、妙な菓子を送ったのは」

『…妙な菓子?
確かに菓子は送ったが、ただのチョコレートのはずだ
お前同様、チョコレートが好きなのは聞いていたのでな』

「そのチョコのせいで、今僕と骸は被害に遭ってるんだよ
いきなり身体が縮んで、だいたい10歳前後くらいになってる」

『それは…ちょっと待っていろ』

一通り説明すると、なにか気になることでもあったのか少し待つように言われ、ヴェルデの声が聞こえなくなる代わりに、なにやらごそごそと物音が聞こえ始める。

『…あ』

しばらくすると、なにやら気付いたような声を漏らすヴェルデ。

「なに、どうしたの?」

『…すまない、これは私の過ちだ』

「過ち…?」

『本来、送る予定だったチョコが今手元にあった
どうやら、送るものを間違えてしまったようだ』

「間違えって…君ね…
それじゃ、わざとこういう問題を起こそうとしたわけではないと?」

『そんなことして、私に何のメリットがある
それに、今回送ったのは代理戦の礼だと言ったはずだ』

「…」


代理戦から半年位経ってるのに今さら?って聞くのは…やめておくか。


「…それで、このチョコの中に入っていた薬の正体は?
現状を見るに、だいたい予想はついてるけど」

『端的に言えば、幼児化の薬だ
だいたい、お前達のように10歳前後になるように設定したのだが…ふむ、どうやら成功したようだな』

「成功したようだな、って…
まだ試作段階だったってこと?」

『そうだ、近々お前に治験を頼もうとしていたのだが、その手間も省けた』

「君ってやつは…」

『ついでだ、今の状態を写真で送ってくれ
あと、報告書等も頼む』

「…ほんと…君ってやつは…」

まるでいつもの流れのように治験を頼むヴェルデに、呆れてものも言えなくなってしまう。

『安心しろ、その分今回の報酬は増やしておく
六道骸も協力してくれるのなら、そちらにも報酬を用意する』

「それについては、本人にも確認してみるよ
ちなみに、効果が切れるのがいつ頃かっていうのは分かるの?」

『効果の程については、本当に作り始めたものなので強いものを作ってはいない
せいぜい、1日程度と考えてくれればいい』

「…1日…」


今日と明日、明後日の3日間は任務が入っていない。
それならば、ヴァリアーに戻るまでにはなんとか戻っているだろう。


「わかった、とりあえず電話切ったら写真送るから
それじゃ」

『あぁ、よろしく頼む』

ヴェルデとの会話を終え、マーモンは何度目か分からないため息をつく。

「どうでした?」

ヴェルデとの通話が終わるのを見計らっていたのか、骸がひょこっと顔を覗かせながら問いかけてくる。

「あぁ、やっぱりヴェルデのせいだった
どうやら、試作で作っていた薬入りのチョコを間違えて君に送ってしまったようだよ」

「おや…それはそれは
しかし、どうしたものでしょう
ずっとこの姿のまま、というのも」

「それについては安心して
たぶん今日1日で効き目が消えるだろうってさ」

「…今日1日…
ならば、幻術でカモフラージュした方がよさそうだ
貴方はともかく、僕は千種や犬にバレると厄介です」

「ん?あぁ…他の黒曜の奴らか…
それもそうだね、とりあえず写真撮らせてよ
ヴェルデに頼まれてるか」

「…おや?」

「?」

スマホを骸に向けて早速撮ろうとするも、骸が不思議そうな声を漏らして自分の掌をジッと見つめだす。

「なに?どうしたの?」

「…いえ…これは…」










「…幻術が使えない」

「…は?」










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