いつから抱いた恋心


「マーモン」

「ム…」

スクアーロを見送り自室へと戻ろうと歩いていると背後から名前を呼ばれて振り向いた。
そこにはベルがおり、ニンッとはにかみながらマーモンの隣へとやってくる。

「まぁたスクアーロん所に入り浸ってたのかよ」

「ムム、普段からいつも入り浸っているような言い方やめてよ」

「入り浸ってんだろ、夜も一緒にねんねしてるみてぇだし?」

ベルの言葉に目をやると、先程と変わらぬにんまりと笑っている。

「…盗み見はよくないよ」

「お前、バレてねぇと思ってるけどオカマも知ってるかんな
んま、お前がそれでちゃーんとおねむ出来てるならいいんじゃね?」

「…ふん、最近は一緒に寝てないけどね
お互い忙しいし、こればかりは仕方がない」

「へぇ、ならマーモンもあんま寝れてない感じ?」

「そんな事はないよ、スクアーロのおかげで最近は一人でも眠れ」

「嘘つき」

「ッ!」

ベルの言葉を否定しようとすると、ベルはマーモンの頬へと両手を伸ばしてガッと掴んで自分へと向けさせた。
ベルはマーモンの目元を指で強めに拭うと、先程まで見られなかった隈が露わになる。

「スクアーロに幻術意味ねぇから化粧で隠すとか…うししッ、よく考えたじゃん」

「ッ…離せよ、馬鹿ベル」 

「馬鹿はどっちだよ、馬鹿マーモン
お前がせいぜい一睡もしないで行動出来んの1週間位だろ?
お前がどんだけ寝てねぇのかわからないけどそろそろ危ないんじゃね?」

パッとマーモンの頬からベルは手を逸らすと、マーモンの瞳をジッと前髪越しに見つめた。
その視線からフッとマーモンは目をそらす。
  
「…明日の任務は大丈夫だよ」

「…んま、王子には関係ないからいいけど
でも任務組む以上はへまされても困んだよ
今日位はちゃんと寝ろよ」

「わかってるよ、君のお世話任されてるしね」

「…」

「それじゃ、僕部屋に戻」

ベルに背中を向けて自分の部屋に戻ろうと一歩踏み出すと、パシッと手首を掴まれ驚きながら体を向けるとベルが見下ろしていた。

「なに、まだなにかあるの?」

「いんやぁ、ただ」

ズイッと顔を近付けてくるベルにマーモンはきょとんとしながら瞳を見つめ返す。










「一人じゃおねんね出来ねぇなら、一緒に寝てやろうか?」


    







ベルの口から出てきた言葉に驚くも、少し間を空けるとマーモンは"ふんッ"と鼻で笑った。

「嫌だよ、君寝相悪いもん」

「お前だってわりぃじゃん」

「それに」

そう言いながらベルの胸へとソッと耳を押し付け、瞳を閉じて心臓の音を聞く。
数秒間聞いた後、マーモンは胸から耳を離した。

「…君の鼓動は煩わしいから眠れなさそうだ」

「はぁん?スクアーロの方が煩わしくね?
あいついつも声でかくてうるせぇし」

「まぁ、そうなんだけどさ…」

少し考え込んだ後にマーモンは口元に小さく笑みを浮かべた後にスッとベルへと背中を向けた。










「スクアーロの音は安心するし、好きなんだよね」










「…」

「それじゃ、おやすみベル
明日の任務よろしくね」

マーモンはそう言うと自室に向かって歩いていき、一人残されたベルはマーモンの背中を見送った。

「好き、ねぇ」

ベルはマーモンが言った言葉をポツリと小さな声で繰り返す。










「その"好き"は一体どういう意味なんだか」










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