おかしなお菓子にご注意を
「…僕としては、君の仕業だと思っていたんだけど」
どうやら、様子がおかしい。
骸がやったにしては、この驚きようといい、慌てぶりといい…演技ではなさそう。
「僕の仕業って…こんなことをして、僕に何のメリットがあるんです?
仮に僕がしたとして、僕自身もこのような姿になる理由もありませんよ
せいぜい、貴方のみ幼子の姿にしてそれを見て楽しむぐらいです」
「君のほうが悪趣味じゃないか…」
すんっとした表情で言う骸に呆れながら、骸がソファーへと座り直す様子を待った。
「…それで、これはいったいどういうことでしょう?」
「僕が聞きたいんだけどね
僕の考えでは、君が用意した"あれ"が原因かと思うんだけど」
「"あれ"…?」
テーブルに置いてあるチョコの箱を指差しながら伝えると、骸の顔がつられてチョコの箱へと向けられる。
すると、"あぁ…あれですか"とどこか納得したような声を漏らした。
「よくよく箱を見ても成分表示は書かれていないし、その他も特に記載がないんだけど
もしかして、誰かの手作りだったり?」
「手作りと言えば、そうなるかもしれませんね
これは、ヴェルデから届いたものなので」
「ふぅん、ヴェルデ…」
…ヴェルデ?
「ちょ、ちょっと待って」
「はい?」
骸の口から思いもよらぬ人物の名前が出てきて、マーモンは驚いたように骸を見る。
骸は、箱を手にするとチョコをつまもうとしており、マーモンは慌ててその手を掴んだ。
「なんでしょう?」
「なんでしょう、って…もしかしたら、そのチョコのせいで小さくなったと言うのに、君はなんでまた食べようとしてるのさ
というか、なんでヴェルデからこんなものを」
「"代理戦での礼だ"と一言添えられてこのお菓子が届いたんです
代理戦の礼というには、いささか遅すぎる礼だと思いますがね」
「…もう半年近く経ってるのに、それは遅すぎると思う…」
というか、絶対ヴェルデから届いたこのチョコのせいじゃないか。
「別に身体に害はないでしょうに、ただ小さくなっただけでしょう?」
「なんで君はそんなに警戒心ないんだよ…ヴェルデの事を信用なんてするもんじゃないよ
この身体じゃ、不便過ぎてたまったもんじゃない」
「不便とは、どこがです?
今のところ、先程言ったように小さくなっているだけてはないですか
他にも症状が出るのだとすれば、僕達が食してから何時間も経っているわけですし
今この状況で出ていない、ということはこれ以上なにも起こりませんよ」
「それは確かにそうだけど、このチョコが身体を小さくするものだという時点でアウトだよ
もし、これ以上食べて今よりも小さくなった場合…君、もしかしたら赤ん坊になるかもしれないだろう?」
「…あぁ、確かにそれはそうですね」
自分の憶測には過ぎないが、これ以上めんどうな事態になってたまるものか。
そう思いながら骸を説得しようと試みると、はたと気付いたような表情を浮かべて骸はチョコの箱から手を引き、マーモンは安堵の息を漏らしながら骸の手を離した。
「とりあえず、ヴェルデにどういった経緯で君にこれを送ったのか確認する必要がある
君、連絡先は知ってる?」
「いえ、残念ながら」
「まぁ、そうだろうね
そしたら少し待ってなよ、今ヴェルデに電話してみるから」
なんで僕がこんなことを…。
小さくため息をつきながら、マーモンはテーブルに置かれていたスマホを手にしてヴェルデへの連絡を試みた。
→
