おかしなお菓子にご注意を
…これは、いったい…。
自分の足元で未だに眠っている少年を見ながら、マーモンはそっと身体を近付けて顔を覗き込む。
…この髪型といい、見覚えのある顔…。
この子は、間違いなく"骸"だろう。
しかし、なんでこんなに幼く…。
見た感じ、おそらく…10歳近くだろうか。
…そう考えると、今の僕の状況も…骸と同様に…。
骸の状況を確認したマーモンは、すぐさま自分の状態を確認しようとキョロキョロと周りを見渡した。
すると、部屋の隅に立てかけられている全身鏡が目に入り、ソファーから転げ落ちないように気をつけながら降りると、少しおぼつかない足取りで鏡の前へと向かい、鏡に映る自分の姿を見た。
「…やっぱり…」
そこには、骸同様に小さくなっている自分の姿が映っていた。
…この姿…記憶の限りでは、だいたい…骸と同じ10歳くらいだつけかな。
もう昔過ぎて覚えていないけれど。
鏡に映る自分の姿へと手を伸ばして、そっと指先で触れてみる。
…よかった、赤ん坊の姿ではなくて。
赤ん坊の姿の自分を見てしまった場合、何をしでかしてしまうか分からなかっただろうな。
…さて、この状況について少し整理をしておこう。
鏡から離れ、未だに眠っている骸がいるソファーへと静かに腰を下ろし、骸の頭へと手を伸ばして優しく撫でながら頭の中を整理しようと試みる。
•ジャッポーネに来てから、特に怪しい奴等が僕達に近づく気配はなかった。
•僕ではなく骸狙いの奴もいるかもしれないけど、僕達2人が気付かずに攻撃をしようなんて無理。
•骸が僕を驚かす為に幻術を使ったのかと思ったが、それをするメリットは彼にはないし、彼自身も同様の姿になっているから省いてもよさそう。
•そもそも、これは幻術ではない。
幻術だったら対処出来るけれど…幻術ではなく、他の要因だと考える。
…この状況、幻術とかではない場合は…身体に何かされない限りはならないだろう。
だけど、僕はそういう事をされた記憶はないし。
ヴェルデの治験や、風が薬をなにかに混ぜ込んで僕に気付かせないように食べさせたように、気付かずに…。
…食べさせる以外…。
…食べ物…。
ふと、骸に差し出されたチョコの箱へと視線を向ける。
自分が食べた分と、他1つ、入っていたであろうスペースからチョコが無くなっており空いている。
…僕が食べていたお菓子は、まだこのチョコだけだった。
ならば、このチョコが原因なのだろう。
…これを用意した…骸が犯人か。
「…骸、起きて」
深くため息をついた後、マーモンは骸の頭を撫でていた手を肩へと移動させて軽く身体を揺すってみる。
「ん…」
数回揺すってみると、骸は小さく声を漏らしながらゆっくりと瞳を開けて、眠気眼でマーモンを見上げた。
「…あなたは…」
「…まったく、君のおかげでひどい目にあってるんだけど」
「…その声は…ッ?」
がばッ!
「むぎゃッ!」
「んくッ!」
「「〜〜ッ!」」
自分の声の違和感に骸が、軽く目を見開いて勢いよく上体をあげた。
その瞬間、顔を覗き込んでいたマーモンと骸の額が勢いよくぶつかってしまい、2人はお互いに額を手で押さえながら悶絶したような声を漏らす。
「い…ったいんだけど…」
「…す、すいません…」
痛む額を押さえ、痛みから涙を瞳に溜めながらマーモンはジトリとした目つきで骸へと声をかける。
すると、同様に額を押さえながら骸の顔が自分へと向けられた。
いつもとは違い、幼さが残るその顔と、特徴的なオッドアイ。
その瞳がしばらく自分を見た後に、骸は自分自身の手のひらへと視線を落として手を握ったり開いたりを数回繰り返し出す。
「…これは…貴方の仕業ですか?なんて悪趣味な」
「おい、なんで僕のせいだと思うんだよ」
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