おかしなお菓子にご注意を
「君としてはどうなんだい?」
「?」
骸の部屋のテーブルに広げられたお菓子の数々。
そこからクッキーを1枚手に取りながら、マーモンは骸へと声をかける。
「どう、というのは?」
「フランの事以外になにもないだろう?
今日はそもそも、彼の術士としての能力を見に来たんだから」
「あぁ、そうですね」
ソファーに腰掛け、足を組みながらチョコレートの入った箱をマーモンへと差し出し、骸は少し考える様子を見せる。
その様子を見ながらマーモンは、差し出された箱のチョコを1つ手に取り口の中へと入れて咀嚼をした。
「んむ、これ美味しい
中に入ってるの…ラズベリーっぽいソースかな」
中からとろりとしたソースが口内へと広がり、甘酸っぱいその味にマーモンは口元を緩ませる。
僕はこれ用意してないから…骸が用意したのか。
「フランについてですが、まずまずと言ったところでしょうね
才能はありますが、なにぶんまだ幼いせいか集中力が欠けている
修行している際も、飽きのせいで僕になにかと注意されていますし」
「…まぁ、そこは仕方ないさ
まだ10歳にも満たないだろう?
ベルが同じくらいの時の方が、彼よりは大変だったし」
「ベルフェゴール、ですか…彼は今いくつです?」
「16歳」
「おや、僕の1つ上ですか
「あぁ、そっか
君、ベルと年齢近かったんだ…だからか…」
ベルはまだまだお子様って感じがするけど、骸はどことなく大人びている。
むしろ、ベルより年が上に見えても不思議じゃない。
(まぁ、1歳差なんてそんなもんか…)
でも…。
「…なんです?そんなに人のことをジロジロと」
いつの間にか、無意識に骸を見ていたらしく、骸が不思議そうな声色で問いかけてくるその声に、マーモンは思考を止めた。
「いやね、なんとなく君とベルを重ねてみたら…やっぱり全然違うなって思って」
「重ねるって…またわけの分からないことを」
「うん、自分で言ってても意味分かってない…でも…うん…」
うと…。
…あれ…なんだろう…。
不意にやってきた睡魔。
マーモンは目をかすかに細めながら瞳をごしごしと擦る。
「どうかしましたか?」
「いや…なんか…眠くてね…
ここに来るのに、しばらく任務詰め込んでたから…それの疲れが出たのかな…」
「おやおや…」
先程までは堪えられるかと思っていたが…やたら、眠い。
マーモンの様子を見ると、骸は口元に小さく笑みを浮かべながら顔を覗き込んでくる。
「お疲れのようでしたら、少し横になっては?」
「いや、流石にそれは…まだ、お菓子も残っているし」
未だにテーブルの上に広がっている菓子の数々。
まだ食べていないものもある。
それなのに…。
「…大丈夫ですよ、貴方が起きるまでちゃんと取っておきますから」
「んむむ…なら…あれとっておいて…おいしかったから…」
「あれ、とは?」
「…あれ」
先程骸に差し出された、ラズベリーソースが入っていたチョコレート。
テーブルの上に置いてあるそのチョコの箱を弱々しく指差しながらマーモンは言うと、ふらりと身体の力が抜けたかのようにソファーへと横たわってしまう。
「あれ、ですか…
あまりあれは食べ過ぎるのは良くないものなのですがね」
「そう、なんだ…でも、美味しくて…どこで手に入れたのかだけ…聞きたいんだ、けど…」
あぁ、もうだめだ…。
意識を、これ以上保つのは…。
「どこで手に入れたか、ですか」
横たわり、瞳がだんだんと閉じていくマーモンの頭にそっと触れて、優しく撫でるかのように滑らせながら骸は呟くように言う。
小さく聞こえてくる寝息。
おそらく、マーモンはもう夢の中だろう。
「それはですね…」
「ヴェルデからの届け物、ですよ」
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