隠してしまいたいこの姿
「…ボスにくっついてた?」
「いや、くっついてた、というのは少し違うのかな…
確か…書類置きに行った時に、ボスが寝ててテーブルに置いておこうと思ったら、テーブルに蓋が開いてたウイスキーのボトルがあって、それを閉めようと顔近付けたら…匂いで酔っちゃったみたいで気絶してたみたい」
「あ"ー…お前酒弱いし、ボスが飲んでるウイスキーは度高いし仕方ねぇと言えば仕方ねぇが…」
説明をすると、容易に想像できたのかスクアーロから納得したような声色で言葉を漏らした。
「それで、気絶して倒れた時にボスの上に倒れたみたいでね
たぶん、匂いがついたのはそれが原因じゃないかな?」
「上に倒れたって…どんな感じだよ
思いっきり上に乗った感じか?」
「ムム、よくは覚えていないけど…スクアーロ、1回降ろして」
言葉にしようにも、どう説明したらいいかわからず、マーモンはポンッとスクアーロの肩を押して離すように伝えた。
すると、スクアーロの腕の力が抜け、それを確認するとマーモンはスクアーロの太ももの上から退いて床に膝をつく。
「横になって」
「ゔぉい、さっきから注文多いな
端的に口で説明すりゃいいだ…」
文句を言いながらも横たわるスクアーロを確認し、マーモンはスクアーロの腹部に頬を乗せてジッと見上げる。
「こうだったかな?」
「…」
「あとなんか酔いながら言ってたような気がするけど…まぁ
それは覚えてないからいいや
どうせ醜態晒してるだけだろうし、君は知らなくていいよ」
頬を乗せたまま言うと、スクアーロがピシッと固まったような気がするも、マーモンは続けて言いながら上体を起こして頬を離した。
「…そんで?」
「そんでって…だから、僕もあまり覚えてないって言ったろう?
まぁ…その後はボスに書類見てもらって、君の部屋に戻ろうとしたらボスにカッ消されそうになって、君が来たの」
「…そういう割には、カッ消されそうな雰囲気じゃなかったがなぁ」
「んむ」
少しため息交じりにスクアーロは言い、マーモンの頬へと手を伸ばしてそっと触れる。
「…んへ」
少し横へと滑らせて撫でられると、マーモンの表情は少し緩んでしまう。
「マーモン」
「ん、今度はなにさ」
「こっち座れ」
マーモンの頬を撫でていた手が離され、少し名残惜しそうにスクアーロを見上げると、スクアーロが上体を起こして座り直して自分の太ももを指さした。
「君も君で、注文多いよ」
「うるせ、お前よりはましだ」
スクアーロに悪態をつきながらも、言われるがままにマーモンは太ももの上へと向かい合うように座り、スクアーロの首へと腕を回して身を寄せる。
すると、スクアーロが自分の首筋へと顔を埋めてきた。
「ちょっと、くすぐったい」
「少し我慢してろ
あまりにもボスの匂いがついてるから、上書きしてんだ」
「そんなマーキングみたいな言い方…」
「お前がやたらめったらと人にひっつくのがわりぃんだろが」
「別にそういうつもりはないよ
今回も、たまたま倒れた先にボスがいただけだし」
「…今度から、ボスんとこ行くにも俺もついていくか」
「それを言い出したら、僕が任務に行く度についていきそうだからやめてよね
まったく、僕はそんなに信用ないかい?」
あやすような口ぶりでスクアーロの頭へと手を伸ばして優しく撫でると、スクアーロは額をグリグリと数回首筋へ押し付けた後、パッと頭を離してマーモンを見た。
「おらよ、マーキングは終いだ」
「自分でマーキングって言ってるし
君の匂いが僕にそんな簡単に付くわけないし、そもそも君の匂いなんてそんな…」
今度はマーモンが先程スクアーロがやったように、スクアーロの首筋に顔を埋めて息を吸う。
そんなに他人の匂いなんて別に気にならないと思うんだけど。
そんなに…。
…そん…な…に。
「おい、どんだけ人の匂いかいでんだ
そろそろ離せぇ」
「んぇ…?」
頭上から聞こえるスクアーロの声。
その声にマーモンが顔を上げると、スクアーロの瞳が大きく開かれる。
「…なに…どうしたの…?」
「…お前よぉ…」
ぽけーっとスクアーロの顔を見つめながら問いかけると、スクアーロの手が自分の頬へと伸ばされ、顔が近づいてきた。
「なんつー物足りなさそうな顔、してんだよ」
「…物足りなくはないけど…ちょっと…君の匂い嗅いだら、ね」
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