隠してしまいたいこの姿


ボフッ!

「ッぐ…」

…なんだ…?
   
突如現れる腹部になにかが落ちてきたかのような衝撃と痛み。それにザンザスは声を漏らし、眉間に皺を寄せながらゆっくりと瞳を開いた。
よく見てみると、自分のお腹に頬を預けるように顔を乗せ、そのまま体をゆだね凭れかかっているマーモンの姿。

「…」

なんでマーモンがここにいる?

ジッとマーモンの様子を伺いながら、だんだんと覚めてきた頭で考え、周りの様子を見ようと視線を動かした。

…テーブルには、俺が確認した書類と…知らない書類。
おそらく、マーモンが持ってきたんだろう。
あとは、飲んでいたウイスキーのボトル。
蓋…開けたままだったものが閉まっている。
書類に害が及ばないようにマーモンが閉めた…ということは…。

…酒の匂いにやられたか。(直感)

「マーモン、退け」

一声かけるも、起きる気配も動く気配も見せない。

「おい」

再度声をかけながら、マーモンの肩へと手を伸ばして軽く揺する。
すると、ピクッと微かに肩が跳ねて"うぅ…"と声が漏れ出た。

「起きろ、早くしないとカッ消す」

「…ッ…ん…ぇ…えれ…ぼす…?」

ようやく起きたのか、ザンザスの腹部に顔を乗せたまま瞳を開けて、ぼけーっとした表情で見上げる。
微かに頬が赤く染まっている様子に、"どれだけ弱いんだ"と内心思ってしまう。

「なんれぼすがここに…?」

「お前が俺の部屋に来たんだろうが」

「ぼくが…ぼす…のへや………へや………なんで…?」

「カス鮫に言われたんだろ」

「さめ…ぁ…うん…すくあーろ…すく…あ…」

「…」

呂律が回っていないのか、うまく言葉を発することが出来ていない。
それどころか、フードから覗く瞳が再び伏せられてしまいそうになり、ザンザスはマーモンを寝かせまいと頬をガッと掴んだ。


むに。


「むきゅ」

「…」

…柔らかい。


むにむにむにむにむに。


「んぇ、む、ん、む、っむむ、ぼ、ぼふ、んにぇ」

マーモンの頬の柔らかさを感じ、ザンザスは掴んでいた手で頬を何度か揉み始める。
すると、突然の行動にマーモンは瞳を軽く見開きながら戸惑ったような声を漏らした。

「ご、ごめん、かっへにはひっへ」

「…別にいい」

無言で揉み続けていると、おずおずとマーモンは話しかけ、その声に気付いたザンザスはパッと頬に触れていた手を離した。

「それで、お前はなんで気を失ってた?」

「えと…スクアーロに頼まれてボスにサイン貰わないといけない書類があったからそれを持ってきて…それで…ウイスキーのボトル空いてたから閉めようとしたら…たぶん、匂いでやられちゃって…」

「…そうか」

やはり予想通りだったか。

酔いが覚めたのか、上体をゆっくりと起こしてその場に座り、先程よりもはっきりとした口調で説明をする様子に、やはり自分の予想通りだったことにザンザスは小さく息を吐く。

「書類の件は分かった、確認しておく」

「うん、ありがと…
それじゃ、僕は戻るよ
まだスクアーロの書類整理、手伝ってる途中だったし」

「…」

ザンザスが身体を起こすと、マーモンも立ち上がろうとソファーを掴んで腰を浮かした。
しかし、そのまま足に力を入れたのだろうが再びへたりとその場に座り込んでソファーへと寄りかかった。

「…あれ」

「…お前、まだ酔ってるな」

「酔うもなにも、飲んでないんだけれど…」

「匂いだけで気絶した奴がなに言ってる」

きっぱりと言い放つと、マーモンは図星なのか"ムム…"と唸った後に黙り込んでしまう。
ザンザスはその様子を一瞥した後、ソファーへと腰掛け直して近くに置いていたペンへと手を伸ばす。

「…30分」

「え?」











「そのくらいなら、あのカス鮫も騒がねぇだろ
俺が見終わるまで、少し待ってろ」

「…え…あ…わ、わかったよ」











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