甘さに勝る、ものはなく
「ごめん、待たせたね」
「お"ぅ」
先に店外へと出て外で待っていると、しばらくしてマーモンが紙袋を手にして店から出てスクアーロの元へと駆け寄ってきた。
「買い物は済んだのか?」
「うん、終わった
君のおかげでいいものが手に入って満足」
満足げな表情を浮かべて紙袋をスッと差し出す様子に、スクアーロは不思議そうにマーモンを見る。
「…?何の真似だ?」
「…本当はもっと早く渡すべきだったんだけど…ベルに時間取られていたから…」
マーモンの言動の意味が分からずにいると、マーモンは"君も忘れてたようだね"と言い足しながらスクアーロの手を取り、持っていた紙袋を持たせた。
「誕生日おめでと、スクアーロ」
「…誕生日…」
マーモンの言葉に大きく瞳を見開きながら呟いた後、ハッとした表情を浮かべてスマホを手に取り画面の日付を確認する。
3/13…そうか…いつもカレンダー捲らずにいてそのままだし、忙しかったのもあって忘れてたな…。
「…誕生日か、俺の…」
「そうじゃなきゃ、君にこうしてプレゼント渡さないよ」
「だな、お前が金かけてまで他人にプレゼントなんて考えねぇよな」
「むきゅッ」
少しからかうように言うとマーモンの表情がムッとしたが、マーモンへと手を伸ばして腰を抱き寄せると小さく鳴き声のような声が聞こえた。
「ちょっと、スク」
「ありがとなぁ、マーモン」
「!」
前髪に口付けをしながらお礼の言葉を告げると、マーモンの瞳が軽く見開かれ、恥ずかしさからなのか頬の赤みが仄かに増した。
「まぁ…うん…君に気に入ってもらえるか分からないけど…どういたしまして」
「そういや、さっき店の中で話してた内容からするとピアスってとこか?」
ふと先程店内で交わした会話を思い出し、ピアスという単語を最後に言っていたような気がしてスクアーロは問いかけてみる。
「あぁ、そうだよ
本当は君がくれたようにネックレスにしようとしたんだけど…髪が長いから絡まりそうだし、ボスの機嫌を損ねたら引っ張られる未来しか見えなかったから」
「…余計な気遣い、ありがとよぉ
せっかくくれたなら、ピアスの穴開けねぇとな」
ピアスなどつけたことがなく、穴など開いていない自分の耳へと触れながらぽつりと呟いた。
「あとで穴、開けてあげるよ」
「開けてあげるって、お前開けたことあんのかぁ?
お前がピアス付けてるところ、見たことねぇが」
まるで開けたことのあるような口ぶりにスクアーロは歩き出しながらマーモンへと問いかける。
すると、それに少し遅れてマーモンも歩き、スクアーロの隣へと追いつくと少し歩みのペースを落とした。
「今はね、赤ん坊になる前に一度開けた事あるんだよ
もしかしたらその後、残ってるかもしれないからあとで見せてあげる」
「意外じゃねぇか、お前がそういうの付けるなんてよ」
「昔の事だからね、若気の至りさ
付けてみたはいいものの、なんかしっくり来なくてね…僕にはどうやら、そういうものは合わないらしい」
合わねぇ、な…。
「合う合わないじゃなくて、付けたいかどうかじゃねぇのか?」
マーモンの言葉になぜか納得がいかず、そう伝えると、マーモンはぱちくりと瞬きを数回繰り返した後、"ふふッ"と小さな笑みを浮かべた。
「…そうだね、うん
君はそういう人間だったね」
「馬鹿にしてんのか?」
「違うよ、褒めてるの」
少し機嫌が良くなったのか、マーモンの手が自分へと伸ばされてソッと握られる。
「来年は、君の誕生日になに渡そうかな」
「ゔぉぉい、今渡したばかりじゃねぇか」
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