甘さに勝る、ものはなく
…まったく…本当に分かっているのかな、彼は。
マーモンは瞳を閉じ、目の前にいるであろうスクアーロの次の行動を待ちながらふと思う。
…まぁ、彼からしたら大した意味はないのだろうし、僕の考え過ぎなのかもしれない。
僕からしたら、ジュエリーなんてものは高級品の一種。
そんな高級品を、他人にあげるなんて信じられない。(そう言いつつ、僕自身自分のためにジュエリーを買ったことはないけれど)
そんなジュエリーは…贈る物によっては"意味"がある。
その"意味"を、スクアーロは…。
考えていると、何かが開かれる音が微かに聞こえてくる。
おそらく、ケースを開けたであろう音。
…じ、自分で言っておいてなんだけど…なんか、こっちのほうが緊張するな…。
僕の考え過ぎなんだろうけど、すごいドキドキする。
サラッ。
「むぎゃッ!」
「ゔぉ?!」
不意に髪に触れられる感触にゾワッと背筋が震え、大きな声を出してしまう。
その声に驚いたのか、スクアーロからも同様に驚いたような声が出てきて、マーモンは瞳を開けてしまい、自分の首筋に触れた。
「い、いきなり触らないでくれる?!
びっくりするんだけど…!」
「わ、わりぃ…まさかそんなに驚くなんて思わなかったから」
「まったく…気をつけ」
チャリ。
「ッむ…?」
今何か、首に…。
ふと感じた首への感触にマーモンはソッと触れてみる。
すると、先程スクアーロがつけたのか細いチェーンがつけられており、触る箇所を変えてみると胸辺りに丸いなにかがついていることに気付いた。
「…藍色の…石…?」
少し顔を下に向けて、その丸いものの正体を探ってみると、藍色の宝石らしきものであり、マーモンは口にする。
サファイア…とは少し色が違うな。
藍色、というよりも青紫に近いような…。
「"アイオライト"っつー石らしい」
宝石をまじまじと観察していると、隣からスクアーロが声をかけてきて宝石について触れ始めた。
「アイオライト?」
宝石に詳しくはないけれど、聞いたことない名前だな…。
「お前がそういう顔すんのも無理はねぇな、俺も聞いたことなかったし」
マーモンの表情から意図を汲んだのかスクアーロはそう言うと、手を伸ばして宝石へと指で触れる。
「そうだね、君がこういうのに詳しいとは思わないし
ちなみに、これを選んだ理由は?」
「そんなん、あるわけねぇだろ」
「…だよね」
自分の問いかけにキッパリと答える様に思わず笑みを零してしまう。
こういう石とかも、確か花と同様に言葉があったような気がするけれど…彼のことだ。
そういうのは特に気にしていないだろう。
「…まぁ…」
「?」
宝石に視線を移して数秒眺めていると、スクアーロがぽつりと言葉を口にし、マーモンは視線を宝石からスクアーロへと移す。
すると、スクアーロの手が自分の頬へと伸びてきて優しく目尻を撫で始めた。
「ちょっと、くすぐったいよ」
「…強いて言うなら…お前の目みたいだったから…」
「…僕の目?」
瞳をジッと見つめながら言うスクアーロに向かい、マーモンは不思議そうに首を傾げる。
「こういう事言うのは性に合わねぇし、お前は気持ち悪がるかもしれねぇが…なんか、一目見てお前の目みたいに綺麗だと思ってな」
「…」
…よくもまぁ、そういうことを恥ずかしげもなく、目を見て言えるな…。
真っ直ぐな瞳を向けて言うスクアーロに、逆に聞いているこっちが恥ずかしくなってしまい、ススーッと視線を逸らしてしまう。
「…そしたら僕は…自分の瞳に似た石を、自分で付けてるってことになるんだけど」
「…あ"」
マーモンの言葉に気付いたのか、はたと気付いたような表情を浮かべ、スクアーロは数秒固まった。
「…ちょっと貸せぇ、違うもんに変えてくる」
「ムムっ、やだよ
せっかく君がくれたんだもん」
再度ネックレスに向けて伸ばされる手から守るように、マーモンはギュッと宝石を握りしめる。
「いいのかぁ、それでよ」
「これがいいのさ、君が選んで僕にくれたんだからね」
宝石を見つめ、頬を緩ませながら告げるとスクアーロは小さくため息をついて頭を掻いた。
「さっきは文句言ってたくせによ」
「まぁ、確かに言い方が意地悪だったね…でも、嬉しいのは本当さ…あッ」
そこでふと、マーモンは思い出したように声を上げる。
「なんだぁ、どうした?」
…そうだ、スクアーロの誕生日…用意してなかった…。
「…ス、スクアーロ
一旦一眠りしたら、ちょっとそのお店連れて行ってよ」
「あ"?別にいいが…なんか用あんのか?」
「まぁね、少し見たいものがあって」
「ほぉん…いいけどよ」
マーモンの歯切れの悪い言い方に、スクアーロは微かに眉間にシワを寄せるも、特に気にすることはなくソファーの上から降りる。
「俺はシャワー浴びてくるから、お前はどうする?」
「そうだね…ふぁ…」
流石に眠くなってきたけど、シャワーだけでも僕も浴びたいし…。
今まで我慢していた眠気が限界に来たのか、欠伸が出てしまう。
欠伸をしながら返事をすると、スクアーロは顔を覗き込みながらマーモンの目尻を優しく指で拭った。
「一緒に風呂、入るかぁ?
お前、その状態だと絶対風呂場で落ちるだろ」
「うむむ…いや、まぁ…そうなんだけどさ…」
口ごもりながらチラリとスクアーロへと視線を向けると、スクアーロは"なんだぁ?"と首を傾げる。
「…お風呂でもし、寝ちゃったら…あとは頼むよ?」
「…そのために一緒に入るんだろがぁ」
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