甘さに勝る、ものはなく
「…」
スクアーロは目の前のテーブルに置いてある、綺麗にラッピングをされた箱をジッと見つめた。
…あの後、勢いに任せて外に出たのはいいものの…特に思いつく食べ物が思いつかなかった。
そもそも、あいつのことだから、ここ周辺のものは大抵食っていそうだし、普通にネットでも取り寄せていそうだ。
「…はっきり言って、金渡すのが一番喜びそうだぁ…しかし…」
それは負けな気がする、勝ち負けとかそういう話ではないのは分かってはいるが。
「だからって…これはなぁ…」
サァァァァ。
「!」
指でツンッと箱をつつきながら呟くと、目の前に突如現れた霧にスクアーロは視線をそちらへと向ける。
その霧は姿が集まっていき、人の形を作っていく。
「…なんだぁ、帰ってきたのか?」
しばらくすると霧が収まり、そこにはマーモンの姿。
スクアーロが声を掛けると、マーモンは口を開いた。
「…ただいま」
「案外かかったなぁ、もうちょい早く帰ってくるかと思ってたが」
「少しね、ここから出るの遅かったし、それにベルが駄々こねてたから」
疲れたように息を吐き出すマーモンの様子に、その光景が容易に頭に思い浮かんでしまい、"あー"と同情の声を漏らしてしまう。
「そりゃ、お疲れさん
どうせずっと起きてたんだろ?一旦部屋戻って寝てこいよ」
「…そういう君はどうなんだい?
その様子だと起きていたんだろう?」
自分の座っているソファーの空いていある箇所にマーモンはポフッと音を立てながら腰掛けて問いかけてくる。
それを横目でチラリと一瞥をした後に、視線を前へと戻した。
「まぁな、少し考え事をしてて」
「考え事?またボスと何かあった?」
「そういうんじゃねぇよ」
「ふぅん…君のことだからボスと…ム?」
ふとマーモンの声が止まり、スクアーロは顔を向けるとマーモンがテーブルに置いておいた箱の存在に気付き手を伸ばして手に取った。
「あ"ッ」
いきなり現れたもんだから隠す暇がなかった…。
「なにこれ、誰かからの貰い物?」
マーモンが手にした姿を見て声を上げると、箱を四方八方から眺めるようにマーモンは見始め、物珍しそうに問いかけてくる。
「いや、そういうんじゃねぇよ…ただ…」
はっきりと言うべきか…いや、だがまだホワイトデーは明日だし…。
「…」
どうすべきか悩み、口ごもっているとマーモンの視線が箱からスクアーロへと移され、"ふぅん…"と小さく声を漏らしてその箱をスクアーロに差し出した。
「はい、貰ったものならちゃんと大事にしなよ」
「だーから、貰いもんとかじゃねぇっての
また変な勘違いしてねぇか、お前」
箱を渡して顔をフイッと逸らす様子に呆れた表情を浮かべながらマーモンの顔を覗き込む。
すると、予想していた通りプクッと頬が膨らんでおり、自分の予想通り過ぎてスクアーロは吹き出した。
「…笑わないでくれる?」
「ククッ…お前が分かり易すぎるからだろが、馬鹿」
「んむむ」
マーモンの視線がこちらに向けられ、頬を指でつついてみるとぷしゅーと溜まっていた空気が抜かれ、マーモンはグイッとフードを掴んで深く被り直した。
「ほら、手出せ」
「?」
そんなマーモンを愛おしそうに眺めた後、スクアーロは箱を手にしてそう指示をし、マーモンはフードを掴んだまま空いている片手をスクアーロの目の前へと言われた通りに差し出す。
「これはお前のために用意したもんだよ、ホワイトデーになぁ」
「…ホワイトデー…別に、君からは期待してなかったんだけどね…」
マーモンの手のひらにソッと乗せながら伝えると、マーモンは手に持ちいろいろな角度から箱を眺めてぽつりと呟く。
「なんだよ、そんなに俺の返しは当てにしてなかったのかぁ?」
「まぁね、君にはバレンタインって言っても、結局チョコはあげられなかったから」
「どっかの誰かさんが渡そうとしたチョコ間違えて食べてそのまま酔っちまったからなぁ」
「うぐ…思い出させないでよ、恥ずかしい」
「勝手に思い出してんのはお前だろ
まぁ、その後にチョコとは別のもの貰ったんだし、その返しだ」
「仕返しって…君までベルみたいなことを言うのかい?」
「あいつと一緒にすんなぁ、ガキじゃあるまいし」
「…まぁ…貰えるものはありがたく貰ってくよ…ありがと
これ、開けてもいいかい?」
「別にいいが、あんまり期待すんなよ?
金一封とか小切手なんざ入ってねぇからな」
「そう、それは残念」
リボンをゆっくりと解き、ラッピングを外すマーモンを横目に少し緊張した面持ちで眺める。
ラッピングの下から現れる箱の蓋にマーモンは手をかけて持ち上げた。
「…これは…」
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