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「マーモンおせぇんだけど」

「…」

任務から帰宅し、スクアーロへと報告を軽く行った後に部屋へと入ると我が物顔でソファーに寝転がりお菓子を口にしているベルがいた。 

「…君ね、また勝手に入って」

「王子今日任務ねぇから暇つぶしに」

「僕は任務終わって帰ってきたばかりだよ」

「んじゃ、王子の相手できるじゃん」

いつものにんまりとした笑みを浮かべながらベルはいい、それにマーモンは小さく息を漏らした。

「するわけないよ、眠いし
僕シャワー浴びたりするんだから」

着ていた上着を脱いでかけると、クローゼットへと向かい着替えの準備をし始める。

「…」

ジッ。

…まただ。

マーモンは背中からベルの視線を感じ、ふと思った。

元に戻ってからベルの視線をやたら感じる…。
そんなに僕の姿が変なのか、はたまた赤ん坊の姿に慣れていてこっちの姿にはまだ慣れていないだけなのか。
別に見られて支障があるわけじゃないけど、こうも見られているとな…。
まぁ、いいや。とりあえずシャワー浴びよ。

「ッ!」

クローゼットから着替えを取り終え、浴室へと向かおうと振り返るといつの間に背後にいたのかベルが目の前におり、マーモンは驚いて体を硬直させた。

「び…っくりした…なに?」

「んー、別に?ただ…」

見上げながら問いかけるとベルはスッと顔をマーモンの首筋へと近付けるとスンッと匂いを嗅いだ。
その行動に更に驚いてビクッと体を跳ねさせる。

「…血の臭いする」

「そりゃ任務行って殺ってきたからね」

「あと、他のやつの臭い」

「…君は犬かなにかかな?ほら、早く退いて」

マーモンの背中に腕を回して軽く抱きしめながら少し声色が低くなる。
"なにか怒ってる?"と思いながらベルの頭に手を伸ばしてあやすような口調で言った。

「君ね、僕はもう赤ん坊じゃないんだならいつまでも抱きついたりしないでくれる?
赤ん坊の頃ならまだ許せたけど、流石にね」

「あん?」

ポンポンと撫で続けながら言うとベルからは不機嫌そうな返事。

あ、やば…もっと怒らせたか?
でも言う機会は今だろうしこの際はっきり言ってやろう。

「君ももう16歳なんだからそろそろ行動を改めた方がいいんじゃない?
いつまでも僕にくっついたりしないでさ
王子が聞いて呆れるよ
そろそろ大人な対応を」

「お前、なんか勘違いしてね?」

「…え?」

マーモンの話をジッと聞いていたベルだったが、途端に話を遮りながらズイッと顔を近づけてくる。
前髪の隙間から微かに見えるベルの瞳。その瞳はマーモンを捉えており、吸い込まれそうになりながらもマーモンはその瞳を見返した。

「俺、お前が元の姿に戻ったからこういう事してんだけど」

「…?言っている意味がわからないんだけど
第一、君の言動は前とちっとも変わってないじゃないか」

「はぁー…鈍感かよこのくそちび」

言葉の意味がわからずにいると、ベルの口からわざとらしく盛大なため息が吐き出される。
その言動にカチンと苛ついて言い返そうとした時に腰に手を回されてグッと引き寄せられてしまう。

「おい、離せ馬鹿ベル」

「うししッ、やだね
お前の言う"子どもの行動"じゃなくて"大人な行動"してやろうとしてるんじゃん」

「大人な行動ってそんな馬鹿な事を」

そう口にした途端、ベルの顔がアップに映し出されあまりの顔の近さに何事かとパチパチと瞬きを数回繰り返す。
そして唇になにやら柔らかなものが当てられていることに気付いた。










…え…ぁ…これって…。










「む…むぐぅぅぅぅ!!」

段々と自分の状況を理解し、ベルが自分にキスを行っていることに気付いたマーモンはくぐもった声を上げながらドンドンとベルの胸板を叩く。
叩かれたベルはマーモンを逃さまいと腰に添えていた手に力を入れ、もう片方の手を後頭部に回して動かないように力を込めた。

「ッん…ぅ……むぐ…」

い、いき…もたな…。

突然の事態に頭が混乱してしまい、普段どうやって息をしていたのかわからなくなり、グルグルと頭の中で考える。
息を欲してダメ元で微かに口を開けると、その隙をついてぬるりとした感触の物が口内に入ってきた。
その感触にゾクリと背筋が震え、力が抜けそうになり必死にベルの服を握りしめる。
ふとベルの瞳と視線がぶつかり、満足そうに弧を描いたのをマーモンは見逃さなかった。










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