甘さの中には苦みも隠れ


「おい、マーモン」

マーモンの部屋へと戻ってきたスクアーロは"コンコンッ"と扉を数回ノックをする。
しかし、返事はなく扉が開けられることもない。

…こりゃ、本格的に寝てやがるな…自分で出かけるとか言っといて…。

ドアノブに手を伸ばして動かしてみるとゆっくりと回り、そのまま扉を開けることができた。
すると、なにやら物音が聞こえ"あいつ起きてんのか?"と部屋の中へと歩みを進める。

「ゔぉぉい、マー」

部屋全体を見渡しても姿が見えず、寝室の中へと入る。
すると、なぜかズボンを膝あたりまで脱ぎかけ、パーカーのみを着ている状態でベッドに横たわっているマーモンの姿があり、スクアーロはピタリと歩みを止めてしまう。

…試されてんのか、俺は…。
つーか、さっき俺がいた時と同じ服ってことは着替えようとして途中で落ちたのか…。

「…お"い、マーモン」

現状を整理した後に深く息を吸った後に吐き出し、冷静にマーモンへと近づいて軽く身体を揺すりながら声を掛ける。

「…んむむ…」

小さく唸り声を漏らし、瞳をうっすらと開けながらごしごしと目をこすり始めるマーモン。
未だに酔いは醒めていないのか、ほんのりと頬は赤く染まっていた。

「お前、出かけんじゃなかったのかぁ?
なんか買いてぇもんあんだろ?」

「ん…ぅ…買う…チョコ…」

「チョコ?」

ゆっくりと上体を起こしながら呟かれた言葉にスクアーロは瞳を丸くする。

「チョコって…お前、テーブルにまだ大量に菓子残ってんだろが
食い終わってねぇのにまだ買うとか、どんだけ食うつもりだ?虫歯になんぞ?」

「違う…僕のじゃなくて…」

そこまで言いかけると口を閉ざしてしまい、マーモンはスクアーロをチラリと見た後にベッドから降りようとした。

「む」

「あ"!」

しかし、脱ぎかけのズボンが引っかかってしまい、前のめりに倒れ込みそうなところをスクアーロは慌てて腹部に手を回して抱きとめる。

「おッま…別に今日じゃなくてもいいだろが!
こんな状態で行けるわけ」

「今日じゃなきゃ、だめなんだよ…今日じゃなきゃ…」











「今日、バレンタインなんだもん…今日じゃなきゃ意味ない…君に、あげるの…」












「…俺に…?」

マーモンの口から発せられた言葉。
その言葉にスクアーロは驚いたように瞳を軽く見開き、言葉を繰り返した。

「…この前、お菓子買いに行った時に君が食べれそうな…洋酒使ったチョコあって…
あまり甘い物好きじゃないの知ってるけど、これならいいかと思ってね…
まぁ、それはもう僕が食べちゃったわけだけど…
さっき食べて、甘さ控えめだし…君も食べれるって再認識したから、それで…」

動くのを諦めたのか、スクアーロの方へと身体をゆっくりと向けてぽつりぽつりと話し出すマーモン。
その言動から、今までのマーモンの様子に納得がいった。

そういうことか…通りでいつも以上に頑固なわけだ…。

「…マーモンよぉ、その気持ちは嬉しいが、流石に今日はやめとけ
この状態でなんかあった方が嫌だからよ」

「…むむ…でも…」

あやすような口ぶりで言いながらマーモンの背中へと手を回して抱きしめるも、どことなく納得のいかないような返事が返ってくる。

「あ"ー…なら、別なもんもらうってことでいいかぁ?」

「別なもの…?
他のチョコもあるけど、それはほとんど君の口に合わないようなミルク味が多め」

「ちげぇょ、あほ」

スクアーロは抱きしめたまま優しくマーモンを押し倒すと、マーモンはきょとんとした表情でスクアーロを見上げた。

「…なにが欲しいの…?」

ジッと見下していると、なにかを察したのかマーモンは仄かに赤く染まっていた頬を更に赤くさせ、口元を袖で隠しながらスクアーロを上目がちに見上げる。

「あ"?そりゃ、この状況だと1つだけだろ」

その表情を見たスクアーロは口角を上げながらマーモンへとゆっくり顔を近づけて口を開く。











「お前に決まってんだろ、マーモン」











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