唯一無二にはなれなくて
「はぁ…もう、ベルのせいで遅くなったじゃないか」
「うししッ」
アジトへと戻ってきたマーモンは、隣に並んでご機嫌で歩くベルを横目で見ながら言う。
「最近マーモンと遊ぶのできなかったし?たまにはよくね?」
「僕は君ほど若くはないんだ、あまり夜遅くまで振り回すのはやめてほしいんだけど」
窓から外の景色を見てみると、もう真っ暗になっており、"ふぁ…"と欠伸を漏らしてしまう。
もう0時近く…明日も任務なくてよかった。
ポケットに入れていたスマホを取り出すと、まだぎりぎり日付を越えておらず、明日の任務の予定も入ってないことに安堵の息を漏らした。
「王子と遊べたんだから光栄に思えよ?」
「はいはい…それじゃ、もう部屋戻るから」
いつの間にか部屋の前へとついており、マーモンは扉へと手をかけながらベルに言う。
すると、ベルは少し物足りなさそうに口を尖らせた。
「えー、まだ遊ばね?どうせ任務ねぇんだろ?」
「無理、もう眠いもん」
「ししッ、おねむならマーモンさー…」
「?」
扉を開けようと少し力を入れようとすると、ベルの手が自分の上に重なり、スッと前かがみになりながら顔を覗き込んでベルは口を開いた。
「一緒に寝る?昔みたいに」
「…ふふ」
ベルの言葉にきょとんとした表情を浮かべていたマーモンだったが、数秒後に小さく微笑んだ。
「なんだい、ベル?1人じゃ眠れないのかい?」
「んなわけねぇじゃん?王子はただ…」
首を微かに傾げながらからかうように問いかけると、ベルは少しムッとしながら答えようとするも途中で黙り込んでしまう。
「…ベル?」
「…」
「ベ」
「ゔぉぉい、お前ら何してんだぁ」
「「!」」
不意に背後から聞こえてくる声。
マーモンはその声にピクリと肩を跳ねさせ、ゆっくりと振り返るとスクアーロがこちらに近付いていることに気付いた。
「あれ、まだ起きてたのかい?」
「あ"ぁ…お前らが行ってからボンゴレ本部から大量に書類届いて
急ぎのやつで、さっき終わった」
「そう、それはお疲れ様」
疲れたような表情で深く息を吐き出すスクアーロを見て、その様子からどれだけ大変だったのかが伺え、労いの言葉を口にする。
「…つか、お前ら今帰ってきたのか?」
「そうだよ、思った以上にベルに…あ、そうだ」
マーモンはふとベルが何かを言いかけていたことを思い出してベルへと顔を向けた。
「ベル、さっきなに言おうとしたの?」
「…ん?」
「いや、"ん?"じゃなくて
さっきなにか言いかけてただろう?様子変だったけど、どうかしたのかい?」
「…スクアーロのせいで忘れたッ」
「ゔぉぉい、俺のせいかよ」
「うししッ」
「…」
頭の後ろで手を組みながら笑うベルをマーモンはジッと見上げ、その視線に気付いたのかベルは首を傾げる。
…なんだろ…なにか…。
「んだよ、マーモン?」
「いや…君が何もないならいいけど…本当に何もないのかい?」
「…」
ベルの様子に違和感を覚えたマーモンが再度問いかけると、ベルはマーモンをジッと見つめた後に頭へと手をそっと伸ばして乱暴に頭を撫で始めた。
「むぎゃッ!ちょ、ベル?」
「なんにもねぇって言ってんじゃん?
王子ももう寝るから、お前も早く寝ろよマーモン」
「え、あ…あぁ…おやすみ…」
頭から手を離し、ニッと笑いながら自分の部屋へと戻っていくベルをマーモンは頭に?を浮かべながら見送った。
「…スクアーロ、なんかベルおかしくなかった?」
どことなく、いつもと違う雰囲気だったベルにマーモンはベルの部屋を見ながらスクアーロへと問いかける。
「…まぁ、少し態度が引っかかるが…そこまで気にすることでもねぇだろ」
心配そうに扉を見つめるマーモンを一瞥した後に、つられてベルの扉へと視線を向けながらスクアーロは言う。
「どうしたんだろ…そんなに一緒に寝たかったのかな
やっぱり、まだまだ中身は子どもだね」
「…少し、ベルには同情するぜぇ…」
ふとスクアーロの方から小さく呟く声が聞こえ、マーモンは振り返る。
「え?なにか言ったかい?」
「なにもねぇよ…ったく…」
聞き返すもスクアーロは軽く頭をかきながらぶっきらぼうに答え、スッとマーモンの横を歩いて通り過ぎた。
…あ。
クンッ。
「ッ?」
スクアーロが自分の元から離れていく様子に、マーモンは慌ててスクアーロの服の裾を掴んで引き止める。
それに驚いたようにスクアーロは振り返り、マーモンをジッと見つめた。
「どうした?」
「…い…」
「?」
「…行っちゃうの…?」
スクアーロを見上げながら不意に口から絞り出されるように吐き出される言葉に、スクアーロの瞳が大きく見開かれる。
マーモンは自分の今の言動にハッとした表情を浮かべると慌てて裾を掴んでいた手を離した。
「…ごめん…今日、ボスのこととかベルと出かけて…結局、君と一緒にいられる時間が短かったから…」
「…」
「今日は君も疲れてるだろうし、明日」
「…マーモンよぉ」
声量がだんだんと小さくなっていき、マーモンは自分の扉へと触れると名前を呼ばれ、背後に気配を感じるとマーモンは扉とスクアーロの間に挟まれていることに気付いた。
「…何のために俺がここに来たのか、わかってんのか?」
「…?散歩…的な?書類整理してて体固まったから」
「んなわけあるかぁ、お前が帰ってるか見に来たんだよ」
振り返りながら答えるとスクアーロは呆れたような表情で見下ろしており、スッとマーモンの耳元へと唇が寄せられる。
「あと、俺はお前も勝手についてくるもんだと思ってたんだが」
「え?」
「…来ねぇのか?」
「ッ」
耳元で静かに囁かれる言葉にゾクリと背筋を震わせる、マーモンはバッと耳を両手で隠し、ゆっくりとスクアーロへと身体を向けた。
「…行く」
「…お"ぅ」
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