ここからここまで
「お前、ベルと喧嘩でもしてんのか?」
談話室にて、自分がボンゴレ本部から回収してきた書類についての話し合いをしている最中、スクアーロは書類に目を向けたまま問いかけてきた。
「してないけど?」
「嘘つけぇ、ベルの野郎すげぇ顔でこっち見てんぞ」
こそこそと小さな声で話しながらスクアーロの視線が一瞬ベルの方へと向けられ、マーモンもチラリと視線を向けてみる。
すると、頬杖をつきながらこちらを見て菓子を口に運んでいるベルの姿が見えた。
「…ただお菓子食べてるだけじゃないか」
「ゔぉぉい、それ本気で言ってるのか?」
「冗談だよ、冗談」
冗談混じりに返答をすると、スクアーロの眉間に微かに皺が寄るのが見え、マーモンは"こほん"と軽く咳払いをする。
「別に喧嘩とかそういうのをしてるわけじゃない、そこは安心してよ」
「ならなんだぁ?
昨日あたりからお前らくっついたりしなくなったから喧嘩かと思ったんだが」
「それはベルがいつも勝手にべたべたとくっついてきてたから
…まぁ、そのことについてちょっと教育係として指導をしたまでさ
1週間、僕のこと不用意に触れたりしないようにって」
「…なんともまぁ、暗殺部隊とは思えない指導だなぁ
小学生じゃあるまいし」
「だけど、彼には必要な指導だからね
いつまでも子どものままではいられないから」
「まるで自分に言い聞かせるように語るじゃねぇか」
スクアーロの言葉にピクリと反応を示しマーモンは視線を向けた。
「…それはいったい、どういう意味だい?」
「さぁな、意味はお前が一番分かってんだろ」
「むむッ」
突然頭を撫でられる感覚にマーモンはギュッと目を瞑りながら声を上げ、ゆっくりと瞳を開くとスクアーロが自分の頭に手を伸ばして触れていることに気付く。
「ちょっと、やめてよ」
「お前もお前でめんどくせぇ奴だな、本当によ」
「唐突な悪口…」
「とりあえず、今日の書類確認はここまででまた明日手伝ってくれぇ」
「?いいのかい?
今日中に確認しといたほうがいいのがまだあると思うんだけど」
「いや、いい
それよりもお前はあっちの相手しとけ」
「あっち…?」
テーブルに置かれていた書類をまとめて立ち上がりながら言うスクアーロを見て、マーモンは不思議そうに顔をスクアーロが見ている方向へと向けた。
すると、いつの間にかマーモンの隣にベルが立っており驚いてビクッ!と勢いよく身体を跳ねさせてしまう。
「び…っくりした…どうしたの、ベル?」
「…」
驚きのあまりまだ落ち着かない心臓の鼓動を抑えるかのように胸に手を当てながらベルを見上げると、ベルの手が伸びてきてマーモンのローブをクンッと遠慮がちに掴む。
「…ベル?」
「…マーモン」
「俺の部屋、来てくんね?」
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