お菓子をくれなきゃ


「…いやまぁ…そうだよね…
雲雀恭弥を満足させるのは跳ね馬か君しかいないもん…」

風の姿を見たマーモンはため息混じりに言いながら額を手で覆い隠し、ゆっくりと近付いた。

「跳ね馬は今日、スクアーロと同じ会合に出るって話だったから君しかいないよね…うん」

「もう…マーモンったら私に内緒で日本に行くなんて…つれないではないですか
せっかく2人きりになれる機会だというのに」

唇を尖らせて拗ねたような口ぶりで言う風の隣へとマーモンは静かに腰掛けて、テーブルに置きっぱなしにしていたお菓子へと手を伸ばす。
しかし、その手は風に手首を掴まれてしまいお菓子に触れることはできなかった。

「…別に、僕がどこに行こうが勝手だろう?
せっかく骸とお菓子パーティーしようとしていたのに」

「しかし、なぜ六道骸と?
わざわざ日本に来てまで…他に何か用事が?
あと、食べ過ぎですので一旦お菓子は休憩しましょうか」

"とりあえず離して"と伝えると風は大人しく手首から手を離し、マーモンはお菓子へと伸ばしていた手を戻した。

「本当はベルとお菓子パーティーしてもよかったんだけど、あいにく彼は任務でね
骸に前に会った時、お菓子の好みが同じだったし、今日はハロウィンだったからお菓子たくさん食べる口実にいいかなって」

「ハロウィン…あぁ、だから今日はやたらと仮装をしている人がいたのですね
恭弥とこちらに来る道中にすれ違いまして、途中から恭弥は機嫌が悪くなっていましたよ」

「あぁ…彼、他人と馴れ合ったりそれを見たりするの嫌いみたいだからね」

「マーモンも先ほどまで可愛らしい服装していましたよね?あれも仮装ですか?」

「あれは骸が…」

ん?

「…ねぇ、1つ聞きたいんだけど」

「なんでしょう?」

「君、僕がさっきまで仮装していたって言ってたけど…いつからここにいたの?
君の姿を認識したの、ついさっきなんだけど」

「おや、それほどまでに六道骸とのパーティーに夢中になっていたのですか?妬いてしまいますね」

「そういうのはいいから、いつからいたの?」

「そうですねぇ…貴方と六道骸がお菓子パーティーを始めた頃でしょうか
いたと言っても、こっそりと窓から侵入してですけど」

「…」

ここ、10階以上のフロアなんだけど…まぁ、そこに関しては触れるのはやめよう。

「というか最初からって…いやもう、君の不法侵入に関しては慣れたからいいとして…
だからといって、僕の交流関係にまで首突っ込まないでくれる?
そもそも、なんで君日本にいるんだよ
今回の件、本当に君に何も伝えてないんだけど」

「ふふ、貴方の行動は逐一確認していますからね
貴方が日本でなにをするかまではわからなかったのですが、なにか用事があるのだろうと思っていましたので
ついでに恭弥と一戦交えようかと」  

さらりと恐ろしいことを…いや、これもいつものことか…。

「はぁ…あほらし…
君と雲雀恭弥のせいでせっかくのお菓子パーティーが台無しだよ」

「それでは私と一緒にハロウィンパーティーしましょう?
せっかく貴方にケーキを買ってきたことですし」

「ムム…」

風が指差す方を見ると、いつの間にかテーブルの隅の方にケーキが入っているであろう箱があり、マーモンは表情を少し輝かせる。

「ちなみに、中身は先ほど話をしていたモンブランとチョコケーキです」

「…仕方ないな、それならもらってあげ」

中身を聞くとマーモンはケーキの箱へと手を伸ばすも、風が先に取り上げマーモンはきょとんとした表情を浮かべた。

「ねぇ、ケーキくれるんじゃないの?」

「えぇ、そうですね
貴方のために買ってきましたので」

「それなら早くちょうだいよ
ケーキも僕に食べられたがってるよ」

「マーモン、今日が何の日か分かっているでしょう?」

「今日?まぁ…そうだね、ハロウィンだけど」

「それならば、私に言うことがありますよね?」
 
「あーはいはい、トリック・オア・トリート
早くケーキ寄越せ」

「そうではなくて」

「なんだよ、早くちょうだいよケーキ」

風の持っている箱に手を伸ばすも遠ざけられてしまい、次第にイライラが募りだすマーモン。
それを見た風は困ったように眉を下げながら微笑み、マーモンへと身体を近付ける。

「ッ…な、なに?」

「マーモン…」










「ケーキと等価交換で、1つお願いがあります」

「…?」










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