お菓子をくれなきゃ


「世の中はさ、ハロウィンだのなんだのと触れ回ってるけどさ
術士の僕達からしたら、楽しめるのってお菓子を食べることぐらいだと思うんだよね」

マーモンは目の前のテーブルに広げられた大量のお菓子の山から、個装されたチョコレートを一粒手に取り袋を開けて口の中へと放り込んだ。
葉を立てるとカリッと音が聞こえ、そのまま咀嚼をすると口の中がチョコレートの甘味と微かな苦味が広まった。

「おや、なぜです?」

隣に腰掛けて自分と同じようにお菓子を食べている骸は、マーモンの言葉に首を傾げる。

「だってそうじゃない?
幻術使えばいつだってハロウィンの雰囲気とか出せるし…こんな感じで」

マーモンはスッと指を軽く動かすと、室内が一気に薄暗くなりコウモリや骸骨といった飾り物が部屋のいたるところに現れ、極めつけには大きなジャック・オ・ランタンがテーブルの横へと置かれた。

「ほらね」

「…確かにそうですね
貴方、いつも仮装しているようなものですし」

「別に僕の服装は占い師とか魔女とかの類の仮装じゃないよ
そういう君は、パイナップルの被り物を年がら年中よくもまぁ飽きずに着けていられるよね」

「これは髪型です
まったく、久々に姿を現したかと思えばそのような憎まれ口を叩きに来たんですか?」

「君が先に吹っかけてきたんだろ、おあいこさ」

お互いがお互いを横目で見ながら皮肉交じりに言葉を発し、マーモンはテーブルに置かれているアイスティーの入ったグラスを手に取り一口飲む。

「僕としては、ハロウィンの時期限定のお菓子が出るので嫌いではありませんが」

「ジャッポーネは限定もの多いよね、この時期だとモンブランとかスイートポテトとかそういう類の味が多いかな?」

「ですね、今日はお菓子しか買ってきていないので…ケーキ屋も見てくればよかったですかね?」

「骸とはこういう好みが似たようなものだから、そこはいいよね
人によっては甘い物苦手とかあるし」

「クフフ、それには同意します
あとでケーキ屋でも覗きにいきましょうか
モンブランとチョコケーキ食べたくなってしまいましたので」

「いいね、君のおすすめのところで頼むよ」

「えぇ、任せてください
…しかし、お菓子を食べるだけ、というのも随分と味気ない」

顎に手を当てて考え始める骸をマーモンはお菓子を口に運びながら見つめる。
すると、なにやら思いついたのか微かに口元に笑みを浮かべたことに気付いた。











…あ、なんか嫌な予感がする。










1/8ページ
スキ