近くにいるのに少し遠くて
「お前、そんなに俺不足だったのか?」
スクアーロは瞳を閉じてベッドに横たわっているマーモンに声をかけながらベッドへと腰掛けた。
「…なんでそう思うのさ」
疲れたような声色でゆっくりとマーモンはスクアーロへと顔を向けると、スクアーロは頭に手を伸ばしてわしゃりと軽く撫でる。
「今日はやけに甘えたで積極的だったからなぁ
それに、いつもなら1回出しただけでへばってんのに今日はむぐ」
マーモンが上体を起こし、手でスクアーロの口を覆い隠してしまい言葉を続けようとすると制止されてしまう。
「お願いだからそれ以上言わないで」
「別に恥ずかしがらなくてもいいだろが」
「恥ずかしいっていうのもあるんだけれど、あまりにも…その…出しすぎて…」
「それだけ溜ま」
「そっちの意味じゃなくて!
…スクアーロの事、好きだけど…あそこまで君のことが好きってことをさらけ出したのが…ってことさ
僕もいい年なんだから、そういうのは控えめにしないといけないって分かってはいるんだけど…溢れ出ちゃって」
自分の行為中の言動を思い出したのか、マーモンはシュゥゥゥと頭から煙が出てしまいそうな程に顔を真っ赤にしてぶつぶつと呟いている。
「いい年って、俺と肉体的には変わらねぇだろ?」
「精神的な問題だよ」
「精神…ねぇ…」
はっきり言って、精神的にはそんなにベルと大差ねぇと思う…つて言ったらブチギレそうだから言うのやめとくかぁ。
「…別にいいじゃねぇかよ、俺としてはその方がわかりやすくていいと思うぜ?」
「…あのね、わかりやすいわかりにくいとか、そういう問題じゃ」
「お前はほんっと、物事ややこしく考えすぎなんだよ
そこまで考えなくても、俺のこと好きならそういう態度さらけ出しやがれぇ
その方が、お前に変な虫もつかねぇだろうからな」
「変な虫…?」
「気付いてねぇならそれでいい
それとも…」
納得のいっていないマーモンの腕を掴んでグンッと自分の方へと引っ張り、マーモンを腕の中に収めて優しく髪の毛を梳くように頭を撫でる。
「あのね、引っ張らな」
「俺もお前の事を好きだって周りにわかる態度、とってやろうか?」
「…なにを言い出すのかと思えば…実質No.2の君がそんな態度…というか、周りにわかる態度ってどういう態度さ」
「そりゃ…口にしようにもあれだな…難しいな…」
「…人前で何しようとしてたの、君」
「そんなやましい事じゃねぇ、んなお前の可愛い姿他の奴等に見せられるか!」
「可愛いって…君もベルもおかしなことを」
「ゔぉぉい、なんでそこでベルが出てくんだぁ?」
不意に出てくるベルの名前にスクアーロは不思議そうに問いかける。
「いや、なんか…ベルがいきなり僕の事可愛いとか言い出してたから…」
ピクッ。
ベルが…マーモンのことを…。
「…言ってたのはそれだけか?」
「え、あぁ…そうだね、まったく…僕のことを玩具みたいに扱うのはやめてほしいものだよ
といっても、可愛いと言われたからなに?って話だけれど」
あいつがマーモンに好意抱いてるのは前々から知っていたが、今まではマーモン本人にそういった言動をしてこなかった。
なのに、今回そういう事を言い出したってことは…。
心中、穏やかじゃねぇな。
「スクアーロ?」
ひょこっと顔を覗き込まれ、スクアーロはマーモンへと視線を向ける。
「どうしたんだい?怖い顔して」
「怖い顔だぁ?んな顔してたか?」
「うん、眉間にすごい皺寄ってたよ」
手を伸ばし、マーモンがスクアーロの眉間を指でなぞりくすぐったさからスクアーロはマーモンの手首を掴んだ。
「ムム、離してよ」
「触ってきたのはお前だろが
…とにかく、他の奴等の前でもそういう態度とってやらぁ」
「ムムムム…それよりもさ…僕としては…」
「…君と一緒にいれる時間、増やして欲しいんですけど」
「…」
「…だめ?」
自分の手首を掴んでいるスクアーロの手に頬を擦り寄らせながらマーモンに見上げられ、スクアーロは少し固まった後に"はぁぁ…"と深いため息をついた。
「…あと1週間経てば、とりあえず落ち着く予定だからそれまで我慢しろぉ」
「…ムム…まだ我慢しなくちゃいけないのかい?
1週間経てばって、それまで会える日ないんだけど」
「俺だって我慢してんだぁ、俺よりも精神年齢が上なお前なら、我慢できんだろ?」
「…うぐ…そ、その言い方は意地悪じゃないかい?」
「お前がさっき言ったんだろ?
まぁ、そうだな…」
「お前が1週間我慢出来たら…褒美としてお前の言う事聞いてやるよ」
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