近くにいるのに少し遠くて


「…お前さ」

ベルは自分の部屋のソファーに座り、頭を抱え爆弾発言をするマーモンを横目に隣でゲームをしながら声を掛けた。

「王子の部屋で、しかも目の前でとんでも発言すんのやめてくれる?」

「とんでも発言って…僕からしたら死活問題なんだけど」

頭を抱えていたマーモンはゆっくりと顔を上げてスンッとした顔でベルを見る。

「ちょ、真顔やめろよ」

「たまには僕の話聞いてよ、暇でしょ?」

「暇じゃねぇよ、ゲームしてんの」

「いつも君が暇な時に相手してあげてるだろう、いいでしょ?」

…なんか今日はやけにだる絡みしてくんな。

ズイッ、と距離を詰めてくるマーモンに違和感を覚えながらベルはめんどくさそうにため息をついてゲームのコントローラをテーブルへと置いた。

ふわッ。

「…マーモン、なんかお前酒臭くね?」

仄かにマーモンから香るアルコールの匂い。
よくよく見てみると、頬が赤らんでいることに気付く。

「もしかして酒飲んだ?」

「さっき、ボスとスクアーロの代わりに会合に参加したら飲まされたんだよ」

「あぁ、なーる」

そういうことか。
それならこいつの今の言動に納得いくわ。
いつもこんな事言わねぇし、だる絡みしねぇし。

「最近はスクアーロ忙しそうだもんなぁ
つか、ボスが会合出ればよかったんじゃね?」

「ボスが素直に出てくれたら僕が行かなくてもよかったんだけどね…
ボス、今日はお昼寝の気分だったみたいだから僕が出たのさ」

「うししッ、なにそれボスらし」

容易にザンザスの光景が想像できて笑ってしまう。

「お前とスクアーロ、そんなに会ってねぇの?」

「スクアーロもボンゴレ本部行ったりボスの代わりに他ファミリーに行ったりしてるから
"代わりに書類見といてくれ"とか、そういう業務連絡来たりはするんだけど、実際は会ってないかな
僕も僕で長期任務入ったり、細々とした任務入ったりで…1ヶ月くらい会えてないかも」

「ふぅん…、ちなみに今日のお前は他になんかあんの?」

「ないよ、会合だけだったし…でも明日お昼から任務…」

「スクアーロは?」

「知らない、スクアーロの予定は視界に入れないようにしてる」

「なんでだよ?お前いつも他の奴の仕事とか把握してんじゃん」

ベルはスマホを取り出し、スケジュールを確認しながらマーモンへと問いかけた。

スクアーロから信頼されて冷静さのせいか、実質ヴァリアーのNo.3みたいな参謀的な立ち位置になってる。
そのせいか、他の幹部のスケジュールも把握して任務の割り振りとかスクアーロとたまにやってるってのに…。

「だってさぁ…」

いつにもなく弱気な声色で、テーブルへとぐてっと突っ伏すマーモンは言葉を続けるように口を開いた。











「スケジュール見て…スクアーロに会えないって分かったらショックじゃないか…」












「何お前、可愛いこと言ってんの?」

「かわ…ッ…」

あ、やべ。つい本音出ちゃった。

サラッと返した自分の言葉にベルは"あ"と声を漏らすも、マーモンの耳に届いていたのかマーモンは驚いたような声を上げた。

「君がそういう事言うの珍しいね…ゾワッてしちゃったんだけど」

「お前、いっぺん刻んでやろうか?」

「冗談だよ…少しだけ」

「つーか、お前のことクソ生意気なはなたれ小僧だったけどさ、可愛いとは昔から思ってたし」

「…へぇ、君にもそういう感情あったんだ
人のことを可愛いとかそういうふうに思う感情が」

淡々と語るベルの話を聞いたマーモンはクスッと口元に笑みを浮かべながら、突っ伏していた上体を起こす。

「王子のことなんだと思ってんだよ
なんだったらさ、今もお前のことすげぇ可愛いと思ってる」

ソファーにもたれかかるマーモンにベルは距離を詰めるように顔を近付け、前髪に隠れた瞳で、マーモンのフードで隠されている瞳をジッと見つめた。

「な、なんだよベル…今日はやけに変な事を言うじゃないか…
もしかして、僕が酔ってるからってからかっているのかい?」

見つめているマーモンの瞳が微かに揺れる。

「…マーモン」











「王子が、その寂しさ…忘れさせてやるよ」











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