いつから抱いた恋心


「少しは頭冷えたかぁ?」

スクアーロはベンチに横たわりながら頭を押さえているマーモンへと声をかけた。

「ッむ…き、君ね…少しは手加減を」

「てめぇがくだらねぇこといつまでも考えてるのがわりぃんだろが」

「くだらないって」

「俺等はお前に守られなきゃいけねぇほど、弱く見えんのかぁ?
お前がヴァリアーの幹部、マーモンとして俺等を見てきて"勝算がある"と感じたからボスに頼んだんだろが
それなのにビービービービー喚きやがって
今回の第8勢力であったバミューダは確かに想定外だったかもしれねぇ
だが、だからといって依頼された任務を放り出したりしねぇよ」

「むぎゅッ」

上体を起こしながら頭を押さえるマーモンにスクアーロは視線を合わせるようにしゃがみ込むと、マーモンの頬へと手を伸ばしてガッと掴んだ。
驚きの声を漏らしスクアーロに視線を向けると真剣な眼差しでマーモンを見ていた。
その後に"フッ"と笑みを零し、その表情にマーモンは思わずドキッとしてしまう。

「…それにしてもお前、そんなに俺が殺される所目に焼き付いてんのかぁ」

「そりゃ…君、何かしらの戦いになると一人だけ大怪我してるからね
それになにより…」

「なんだぁ?」

「…なにもない、ほらもう病室に戻ろ…ッ」

フッと視線を逸らして立ち上がると、目眩がしてしまいそのまま崩れ落ちるようにスクアーロに寄りかかった。

「ム…ごめん」

「う"ぉぉい、ふらふらじゃねぇか
これじゃどっちが怪我人だか分かりゃしねぇ…ッと」

呆れたような口ぶりでスクアーロは言うとマーモンをそのまま抱き抱え、スタスタと歩き出した。

「ッ、ちょ、ちょっと
傷口開いちゃうよ!」

「こんぐらい平気だぁ、軽すぎるから傷口なんな開かねぇよ
お前、飯もちゃんと食ってねぇだろ」

「どうせ食べても吐いちゃうからいいかなって」

「あ"ー、だからさっきトイレで吐いてたのか
明日にでもルッスーリアに食べやすいもの作らせるかぁ」

「とりあえず下ろしてよ、自分で歩ける」

「下ろしてもいいが、叩きつけんぞぉ」

「叩きつけるってなに…?!」

「いいから黙って抱かさっとけぇ、そんなふらふらじゃこっちが心配でヒヤヒヤするわ」

「ムムム…」

スクアーロの顔を下から見上げながらマーモンは諦めたのか落ち無いようにとスクアーロの服をギュッと掴んでコテンと胸板に耳を押し付けた。
自分の作った心臓が、一定のリズムを刻んでいる。

あ…生きてる…ちゃんと…僕の作った幻術で…。

「う"ぉぉい、お前今日はベルに迎え越させるからホテルで…マーモン?」

部屋につくとスクアーロがマーモンに声を掛けるが反応を示さずに微動だにしない事に気付き、顔を向けるとスーッと寝息を立てながら眠っていた。

「…仕方ねぇ、俺のベッドに」

眠ったことに安心したのか小さく息を漏らし、自分のベッドへと寝かせようと優しくベッドに横にするも、自分の服を掴んだまま離すことがない。

「ん…スクアー…」

小さく寝言でスクアーロの名前を呼び、なにかを探るように手を動かす様子を見て"少し大きめだから行けるか"とベッドのサイズを確認した後、マーモンの隣へと横になった。
自分の心臓の音がマーモンに聞こえるようにと胸の中にすっぽりと収めると、探っていた手の動きが止まり、大人しくなった。

「ガキかよ…ッたく」

マーモンの様子に呆れたように笑いながらスクアーロは瞳を閉じ、そのまま眠りについた。










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