いつから抱いた恋心


「少し肌寒いな、大丈夫かぁ?」

病院の中庭へとやってきたスクアーロとマーモン。
スクアーロは後ろから少し遅れて歩いてくるマーモンに声をかけながら近くにあったベンチへと腰掛けた。

「別に、僕は
君こそそんなに歩いて大丈夫なのかい?」

「お前の幻術で作った心臓あるんだ、心配ねぇよ
それともなんだ?お前は俺に生半可な幻術でもやってるのかぁ?」

「そういうわけじゃ…」

ペットボトルに入ったお茶を飲み横目でスクアーロは見て問いかけ、マーモンはスッと視線を逸らしながら隣へと腰掛ける。

「お前、最近寝てねぇだろぉ」

「…寝てるよ」

「嘘つけぇ、そんな顔してるくせによく言うぜぇ」

「ムム…はぁ…」

マーモンは少し言葉を詰まらせた後に大きなため息をついた。

「もしかして、幻術に不備でもある?
心臓、痛むかい?」

「さっきも言ったがそれは大丈夫だぁ
ルッスーリアから聞いてたが、ずっと俺に付きっきりらしいじゃねぇか」

「そりゃ、僕が近くにいないと君死んじゃうからね
なるべく近くにいるのさ」

「それだけじゃねぇだろ」

ふとスクアーロの声色が低くなり、マーモンはピクッと反応を示して目を向けた。
その瞳は真剣で、どこか怒りの色を含んでいる。










「お前、もしかしてこの怪我…自分のせいだと思ってねぇだろうなぁ」










「ッ!」

マーモンはスクアーロの言葉に目を見開いて動きを止めた。
その反応にスクアーロは"ほらみろ"と言いたげな表情をしながら立ち上がる。

「な、なにを…僕がそんなこと思うわけないじゃないか」

「顔に出てんだよ、お前
赤ん坊の時もそうだったが、フード被ってる割に分かりやすいったらありゃしねぇ」

「むぎゃッ!」

少し前屈みになりながらスクアーロはマーモンのフードの裾を掴むとガバッと勢いよく捲り上げた。
一気に広がる視界に驚きの声をあげ、月の明かりの眩しさに瞳を細める。

「お前が俺の怪我に負い目感じることはねぇ
これは俺の弱さでなった結果なんだからなぁ」

「ッ…でも…」

「他の奴の怪我もそうだ、彼奴等が弱さが招いた結果
無論、ボスも同じだ
まぁ、まさか腕切り落とされるとは思わなかったがなぁ
我が儘放題で普段動かねぇからだ…ったく」

ケラリと笑いながらスクアーロは話し、それをジッと俯いて聞いていた。

「それに、今回ボスがこの件をお前から引き受ける時点で死ぬのはまだしもただで勝てるなんて思ってねぇ
他のチームのメンバーがメンバーだったからなぁ
お前は覚えちゃいねぇだろうが、10年後の世界じゃ」

「…でも、僕が君達に頼まなければ」

スクアーロの言葉を遮るようにマーモンは言葉を被せた。

「僕が君達に頼まなければ、大きな怪我をしなくて済んだんだ」

自分の感情をギュッと押し殺すかのように太腿に乗った自分の手を強く握りしめながらマーモンは言葉を続けた。

「ボスだって腕を吹き飛ばすことなんてしなくてよかった
ベルやルッスーリア、レヴィだってそうだ
それになにより…」










「君が…スクアーロが心臓を無くすことだってなかったんだ…」










「それなのに僕は君達が代理だからと言う理由で手を出すことも、守ることもなく少しの時間しか戦えなくて少しの怪我しかしてない…
ルールなんて無視して、君達のことを守ればよかったんだけど僕は結局自分の事しか考えなかった
結果的には、沢田綱吉のおかげでこうやって皆命を失うことはなかった…だけど、一歩間違えたら皆死んでいたかもしれない
僕は…」

マーモンの頬に涙が伝い、スクアーロを見上げながら言葉を続ける。
スクアーロはそんなマーモンをジッと見下ろして黙って聞いていた。

「ヴァリアーの皆が死んだらどうしようって
僕のこの場所が、失くなったらどうしようって…ずっと怖かったんだ
その時の恐怖がもう過ぎたことだと言うのに頭にこびりついて、瞳を閉じると君が心臓を貫かれる瞬間が今起きているかのように映し出されて…眠るのが、怖い
君の元から離れないで近くにいるのも、もし僕が離れた瞬間になにかあったら嫌だからなんだ
昔の僕じゃ考えられないけれど、今の僕にとってここは…ヴァリアーは…それだけ大事な場所なんだよ」

自分が溜め込んでいた思いを全て吐き出すと、マーモンは頭に登った血がだんだんと冷めてきたのか自分の今の発言が恥ずかしくなってしまい、ゴシゴシと腕で涙を拭いながら立ち上がった。

「ごめん、語り過ぎたね…ちょっと顔洗ってく」

スクアーロの横を通り過ぎようとすると、ガシッと頭を掴まれてしまい驚きのあまり歩みが止まる。

「スクアー…むぎゃッ!い、いた、痛い痛い痛い!」

ギリギリと頭を掴む手に力が込められていき、あまりの痛さにマーモンは声を上げ、中庭に声が響き渡った。










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