いつから抱いた恋心


皆が寝静まった深夜。
マーモンは変わらずにスクアーロの隣に腰掛け、胸に手をかざし瞳を閉じた。
自分で作った幻術の心臓が、スクアーロの中でトクン…トクンと一定のリズムで鼓動を続けている。

「…ふぅ」

安堵の息を漏らしながら、かざしていた手をしまいスクアーロの顔をジッと見つめた。

僕のせいだ。
僕が元の姿に戻りたい、そう願って皆に頼んでしまったから。
ボスも、ベルも、ルッスーリアも、レヴィも…そして、スクアーロもしなくてもいい怪我をしてしまった。










"ドッ"







 


「ッ…」

スクアーロの腹部が貫かれる映像が脳裏に流される。
マーモンは口元を抑え、よろめきながら椅子から立ち上がると静かに部屋から出ていった。

「ッむ……うげ……ぇ」

近くのトイレへと入っていき、洋式のトイレのドアを開けて吐き気が堪えられずにそのまま嘔吐をしてしまう。
しばらくなにも食べられなかった為か、吐き出されたのは胃液のみ。
マーモンは荒い呼吸を繰り返しながら、再び吐き気の波が訪れ再度便器に顔を突っ込んで吐いた。

「は…ッ…」

だんだんと吐き気が収まっていき、ふらりと立ち上がると手洗い場の水を口に含んで数回うがいをし鏡に映った自分を見た。
自分の顔はうっすらと目の下に隈が出来ており、覇気を感じられない。

スクアーロの心臓作り続けて早数日。
その間ずっと眠っていないからそりゃこうもなるか。
別に僕が眠っている状態でも幻術を維持は出来る。

…出来るんだけれども。

「…」

瞳をつぶる度に先ほどの映像が流れてしまう。
そのせいで、眠るのが怖くなってしまいほぼ起きている。

理由はもうわかってる。
ある種のトラウマになってるな、これ。
早くこれを克服しないと本部に戻って任務になった時に使い物にならない。

「…ヴェルデに睡眠薬でも作らせるか」

今となっては、彼奴等とつるむのはごめんだけど背に腹は代えられない。
強めのものを作ってもらって強制的に眠りに落ちれば夢なんて見ることもないだろう。

マーモンは出しっぱなしになっていた水道の蛇口をキュッと閉めるとトイレから出た。

「う"ぉぉい、大丈夫かぁ」

「ッ!」

聞き覚えのある声が聞こえビクッと体を跳ねさせ勢いよく後ろを振り返ると、壁によりかかり腕を組んで立っているスクアーロの姿がそこにあった。
顔色は普段とあまり変わりなく、マーモンはホッとした。

「…ごめん、起こしてしまったかい?」

「喉が渇いて起きただけだぁ」

スクアーロを見上げながら問いかけると片手に持っているペットボトルを見せてきた。
その後、スクアーロはジッとマーモンの顔を見つめた後にソッと手を伸ばして目の下に出来た隈に触れる。

「ムム、なんだよ」

「ひでぇ顔してんなぁ、と思ってな」

「ひどい顔って…まぁ、否定できないね
あまり出歩くと体に触るから、早く戻ろうか」

「待てぇ」

発言に少しムッとしながらも、先程鏡に映った自分の顔を思い出し否定が出来ない。
スクアーロの横をスッと歩き、部屋へと戻ろうと声をかけると腕をガッと掴まれて静止させられた。










「お前、ちょっと付き合え」

「…?」










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