いつもと違う姿の壁
「おせぇよ」
「…なんだぁ、この状態は」
ベルの部屋へとやってきたスクアーロは、目の前の光景になんとも言えない表情を浮かべた。
「なんでマーモンがお前の上で寝てんだよ」
目の前にはソファーで横たわるベルの上にマーモンが跨って眠っており、ベルはマーモンが落ちないように抱きしめて支えている。
「王子が知るわけねぇじゃん
お菓子やけ食いし始めたと思ったらいきなり泣き出して、そんで抱っこしたらこいつ寝始めてさ
退かそうとしてもこいつしがみついて動けねぇし、起きるまで待とうとしたらこいつずーっと寝てるし」
「だから俺のこと呼んだのか…ったく、ガキかよ」
「まじでガキじゃん、見た目からしてさ
あー、あと俺思ったんだけどさ、マーモン中身も幼くなってる」
マーモンを抱き締めながら上体を起こすベルは思い出したかのように口にした。
「中身…」
「いつもならお前となんかあっても泣かねぇし、菓子の量半端じゃねぇし
それに、なんつーか…言動が幼い?」
「…」
…確かに、そう言われてみるとそうかも知れねぇ。
ベルの言う通り、普段なら怒らねぇような事で怒ってるし、わがまま?というか自分の欲に忠実で。
…自分の欲に…忠実…。
"寂しいんですけど"
「おい、なに考え込んでんだよ」
ベルの言葉にハッとして考えを中断すると、ベルの視線がジトリとこちらに向けられているのがわかった。
「早いとここいつ、回収してくんね?
流石に身体疲れたんだけど」
「…チッ…仕方ねぇ」
「お前のもんなんだから、文句言うなよ」
「わかってらぁ…ほら、マーモン起きろぉ」
「…ん…うむ…」
返事をしながらマーモンの身体を軽く揺すると、マーモンの口から小さなうめき声が聞こえてうっすらと眠たげに瞳が開かれる。
「いつまでもベルに引っ付いて寝てんなぁ」
「…しゅくあーろ…」
ぽやぽやとした雰囲気でスクアーロの名前を呼ぼうとするもうまく舌が回らずに舌っ足らずな呼び方をするマーモン。
それを見てスクアーロは動きをピタリと止めるも、小さく息を吐いてマーモンに手を伸ばす。
「ほら、部屋行くぞ」
「…やだ」
「やだ、じゃねぇ」
「…ぎゅーしてくれないと、やだ
ベルといる…」
うとうととしながらベルの服をギュッと掴むマーモンの姿を見て、スクアーロはピクッと反応した後にしゃがんでマーモンに視線を合わせた。
マーモンは眠たげな瞳をスクアーロへと向けた後、フイッと顔を逸らしてベルの胸板へと押し付けだす。
「…ぎゅーがいい…」
「ぎゅーって、お前」
「…ししッ、なら王子とずっとぎゅーしてる?
スクアーロほっといてさ」
スクアーロが躊躇していると、ベルはマーモンとスクアーロを交互に見てにっとはにかみながらマーモンを抱きしめる力を強めた。
「むきゅ」
「んま、そーいうわけでスクアーロ
呼んどいて悪いけど、マーモンはこのまま王子が世話を」
「マーモン」
「む、なに…」
マーモンの名前を呼んだスクアーロはマーモンに向けて手を差し出した。
「ぎゅーしてやるから、戻るぞ部屋」
「…ほんとに?」
「何度も言わせんなぁ、ほら来い」
「…」
ベルとスクアーロを交互に見たマーモンはしはまらくするとスクアーロへと遠慮がちに片手を差し出す。
それをスクアーロは手に取ると、そのままマーモンを引っ張り自分の腕の中へと収めた。
「あーぁ、王子の抱き枕が」
「お前が回収頼んだんだろが
部屋…は、一旦俺の部屋でいいか
手間賃として仕事手伝わせねぇと」
「お前の部屋ねぇ…」
「なんだぁ、その意味深な言い方」
「うししッ、別に?ただ1つ言っとこうと思って」
「なんだ?」
「お前の部屋に連れてくのってさ、ほんとーに仕事手伝わせるだけ?」
「…黙秘だぁ」
「しししッ!その返答の時点でアウトじゃね!」
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