いつもと違う姿の壁
「…そんで、王子の所でやけ食いしてるってわけ?」
ベルの部屋。
大量のお菓子とルッスーリアが作ったであろう焼き菓子を手に持ちながら部屋へとやってきたマーモン。
勝手にテーブルに広げて食べている様子を横目に見ながらベルはお菓子を1つ手に取り口にしながら言った。
「やけ食いじゃないよ、おやつだよ」
「…おやつ、ねぇ…」
膨れっ面のままおやつを食べているマーモンを見たベルはテーブルの上のおやつに自然と視線がいってしまう。
おやつって量じゃねぇだろ、これ。
1日の摂取カロリー大幅に超えてんぞこの量。
普段飯、大して食わないくせにどこにこの量が入るんだよ。
「あんまり食い過ぎると太るぞ」
「むむッ、ルッスーリアみたいなこと言わないでよ」
「なんで俺があいつと同じみたいな言い方すんだよ」
「さっき焼き菓子貰いに行ったとき言われたから」
「あー…」
容易にその光景が浮かんだのか、ベルは納得したような声を漏らす。
「つーか、スクアーロとなにかある度に王子の所に来るのやめろよな」
「君だって、暇な時に僕のもとに来るんだからこれでおあいこだろう?」
「ばーか、理由が違うだろ、理由が
お前らの痴話喧嘩に王子を巻き込むなって話」
「…それは…」
「痴話喧嘩だろー?まーったく、お前ら2人とも大人なの…に…」
けたけたと笑いながらそう言ってマーモンに視線をやると、お菓子を手にしたままぶわッと大きな瞳に涙を貯めているのが目に入り言葉を止めてしまう。
「…え、ちょ、お前何泣いてんの?」
「…泣いてない」
「嘘つけ、泣いてんじゃん
それで誤魔化せるわけねーだろ?」
「…だって…スクアーロがぁ…」
「あーもー、お前本当にめんどくせぇな
ほら、今なら王子の胸貸してやるから来いよ」
「…むむ…」
ぼろぼろと泣き出すマーモンをめんどくさそうに見た後、ベルは両手を伸ばしてマーモンに来るように言うと、マーモンは少し戸惑いベルを見つめ出す。
「…早く来いっての!」
「むぎゃッ!」
いつまで経っても様子を伺うだけのマーモンに痺れを切らしたのか、ベルはマーモンの手首を掴むとそのまま勢いよく引っ張り自分の腕の中に無理やり収め込んでしまう。
「うししッ、つっかまっえた」
「ちょ、っとベル…」
にんまりと笑いながらベルはマーモンの顔を見下ろすと、なにか言いたげなマーモンが口を開こうとするも、そのまま少し黙り込むとベルの胸板に顔を押し付けて隠しだした。
…薬被って小さくなった時より、少し背でかくなったか?
つっても、ほーんの少しだけど。
てか骨ばってて抱き心地はあんまよくねーな、これなら赤ん坊の時のがむにむにしてて抱き心地よかったかも。
…つーか。
ベルはマーモンの身体の変化を確認した後、自分の胸板に顔を押し付けて黙り込んでいるマーモンを見下ろす。
なんかマーモンのやつ、中身まで幼くなってね?
スクアーロとなにがあったか知らねぇけど、そんなんでこんなに落ち込んで泣くわけないし。
薬被った時は、身体の変化に気を取られて分かんなかったのか…?
「マーモン」
「…」
「おーい、マーモーン?」
「…」
「…?」
返事しねぇ。
声をかけても反応を示さないマーモンを不思議に思いながら、ベルはマーモンの肩を掴んで顔を向けようとした。
「おい、聞いてんのかよマーモ」
マーモンの顔を見てみると、うっすらと目元を赤くした状態で眠ってしまっており、ベルはきょとんとした後に深いため息をついた。
「…まじでガキかよ、こいつ」
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