小さな姿が目にするものは?
「あらあらあら〜!
可愛いじゃない、マーモンちゃん!」
談話室。
ベルとマーモンが買ってきた服を試着しているマーモンを見て、ルッスーリアは身体をくねくねとさせながら言った。
「…いやこれ、女の子用だよね…」
白色のフリルのついたワンピースを着せられたマーモンは眉間に皺を寄せながらぽつりと呟く。
「うしし、他にもフードがついてる服とかあるから
恐竜とか猫とか、そーいうやつ」
「面白がってるだろ、君」
「こーんな面白い玩具、そーそーねぇからな
服代は王子が出してやったんだから文句言うなよ」
「はぁ…これなら僕が自分で服代出した方がましだったよ…まったく」
「マーモンちゃん、髪の毛結わせてくれない? 一度やってみたかったのよねぇ」
「お金、Sランクの報酬分振り込んでおいてね」
「はいはい、こちらへいらっしゃぁい!」
ソファーに座るように指示され、マーモンは小さくため息をつくとルッスーリアの近くのソファーへと腰掛ける。
すると、ルッスーリアは後ろへと回り込んでマーモンの髪の毛に触れ始めた。
「そういえば、スクアーロはどうしたの?」
「スクアーロなら部屋で書類整理してるはずだよ
ベルと買い出しに行く時やっていたからね」
「あら、それならお洋服お披露目行ったほうがいいんじゃない?
このお洋服なんてマーモンちゃんにお似合いだし」
「笑い者にされるのがオチだと思うけど」
「うししッ、行くのやめとけって
こーんなマーモンの姿見て、我慢効かなくなったら流石に逮捕案件だから」
「あらやだ、ヴァリアー初の逮捕者になっちゃうわぁ」
「はぁ…あほらし…」
ベルとルッスーリア、2人の会話を聞いていたマーモンはため息をつく。
まったく、2人はスクアーロをなんだと思っているんだが…。
「はい、おしまい」
話しながらも髪を結い続けていたのか、背後から声が聞こえなんとなく首筋あたりが涼しくなっているのに気付いた。
結われた髪が崩れないように慎重に触ってみると、どうやらところどころ編み込まれたポニーテールになっているよう。
「…え、なにこれどうなってるの?」
「んふふ、それは内緒よ
さぁさぁ、スクアーロに可愛い姿を見せていらっしゃいな」
「えぇ…そもそも、この姿でアジト内うろつく事自体嫌なんだけど
せめてこの服脱いでも」
『…!』
『…』
『…!!』
「あら?」
「これ、ボスとスクアーロの声じゃね?」
ふと廊下の方から2人の声が聞こえてきてベルとルッスーリアは顔を見合わせる。
しかし、マーモンはなにも聞こえていないのか不思議そうに首を傾げた。
「え、なにか聞こえた?」
「ボスとスクアーロの声よ
珍しいわねぇ、ボスが部屋から出てくるなんて」
「うししッ、たぶんこれスクアーロ完全にキレてるやつだろ
声の大きさ的に」
「マーモンちゃん、もしかして聞こえないの?」
「うん、別に聴力なくなってるわけじゃないんだけどね…まぁ、悩んでも仕方ないか」
ガチャッ。
「書類整理くらい自分でやれ、このクソボスがぁ!」
扉が開けられると同時に聞こえてくるスクアーロの怒鳴り声。
それを気にもせずに前を歩くザンザスの姿が現れた。
「うるせぇ、クソ鮫
なんのためにお前がここにいると思ってる」
「少なくとも書類整理をするためじゃねぇのは確かだわ!
お前がそんなんだから俺は最近前線立ててねぇし、休みもねぇんだぞぉ!」
「知るか」
「知るかぁ?!!」
「うっしし、すんげぇキレてる」
「んもぅ、スクアーロは少し落ち着きなさいな
ボス、紅茶でもいかが?」
「…もらう」
ザンザスはドカッとソファーに座り、瞳を閉じながらルッスーリアの言葉に返事をした。
スクアーロは"ギギギッ"と音が鳴りそうなほど歯ぎしりをし、ザンザスに再び詰め寄ろうとするもふとマーモンの姿が視界に入り、ピタリと動きを止める。
いきなり黙り込んで動きが固まるスクアーロを見て、ザンザスはその視線の先を見ると首を傾げた。
「おい、なんでマーモンがこうなってる」
「あ、僕だって分かるんだ…流石ボス」
「みてみてぇ、私の傑作!
すごくかわいいでしょう?」
「服選んだのは王子ね」
「…」
頬杖をつきながら鋭い目つきでマーモンを見つめるザンザスだったが、不意に立ち上がるとマーモンの目の前で立ち止まった。
「…?どうしたのボス」
「…」
「…」
「…」
何も言わずに自分を見下ろしてくるザンザスにマーモンは戸惑う。
もしかして、任務ミスったのバレてかっ消そうとしてる…?!
「ご、ごめんボス!僕」
慌ててマーモンは任務の件について話そうとすると、ザンザスの片手が自分へと伸ばされてくる。
ッけ、消される…!!
あまりの気迫に消されると思い、マーモンはギュッと瞳を閉じた。
しかし、いつになっても身体に痛みや衝撃が来ない。
「…?」
マーモンは恐る恐る瞳を開けてみると、伸ばされたザンザスの手首をスクアーロが掴み、マーモンとザンザスの間に庇うように立っていた。
「おい、カス鮫」
「…」
「スクア…むぎゃ!!」
ザンザスの言葉にスクアーロは反応を見せず、手首を掴んでいた手を離すと声をかけてきたマーモンの身体をガッと引き寄せて脇に抱えるとツカツカと談話室から出ていく。
「あーらら、マーモン捕まっちった」
「…」
「ボス、マーモンちゃん今は幻術使えないから消そうとしたら本当に消えちゃうわよ?」
「…違う」
「あり?消そうとしてたんじゃねーの?」
「…」
「…!もしかしてボス、あぁいうのが好」
「違う」
「うししッ、即答」
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